【きもつき情報局】TPPの最近の動向について

2月22日からシンガポールで開かれていたTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加国閣僚会議は25日、「最終合意に向けてさらなる前進を果たした」との共同声明を出したものの実質的な妥結には至らないまま閉幕した。
 
秋の中間選挙を意識し、なんとか合意を得たい米政府は、TPP交渉のカギとなる日本との事前交渉に躍起となっていた。米通商代表部(USTR)のフロマン代表が2月15日(現地時間)、甘利明経済再生相・TPP担当相とワシントンで会談したほか、18日にはカトラー米通商代表代行が東京で大江博首席交渉官代理と会談した。にもかかわらず、シンガポールの会議でも日米間の溝が埋まることはなかった。
 

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 TPPで日本の米はどうなるのか
 
米国はオバマ大統領の4月訪日に合わせてTPP合意をめざし、交渉を加速させつつある。
 
米国とNAFTA(北米自由貿易協定―1994年発効)を締結しているカナダ、メキシコは2月19日、メキシコで北米首脳会議を開催。TPP交渉の早期妥結へ連携する方針で一致し、日本を含むアジアの交渉参加国に対し、関税撤廃の圧力を強めている。
 
一方、米多国籍企業、米シンクタンク、特にCSIS(米戦略国際問題研究所)などの根回しを受けている日本の財界、経団連・米倉会長(住友化学会長)、日本商工会議所・三村会頭(元新日鉄社長)、経済同友会・長谷川代表幹事(武田薬品工業社長)の3人は2月10日に安倍首相に面談し、「TPP交渉の早期妥結を求める」要望書を提出し、日米二国間交渉の合意が不可欠と交渉妥結への英断を求めた。
 
重要農産品5項目の関税保持が認められなければ、交渉より撤退するとした自民党と衆参両院の農水委員会の決議に対し、党の石破幹事長や甘利TPP担当相は最近、交渉には譲歩が必要だと牛肉、豚肉などの主要品目の関税低減や、関税をなくしても影響の少ない加工品や輸入実績の少ない品目については米国に譲歩する可能性が出てきたと日本経済新聞や朝日新聞でも論調が軟化している。ここらあたりに安倍政権のメデイア操作の影響があるように思われる。
 
しかし、米国自体では交渉加速のため、オバマ大統領が大統領通商交渉権限を強化する貿易促進権限(TPA-Trade Promotion Authority)法案の早期可決を求めているが、労働組合への配慮などから、通商自由化に慎重な与党・民主党幹部が抵抗しており、成立のめどは未だにたっていない。
 
さらにオバマ政権がTPPとともに、目玉としているEU(欧州連合)とのFTA(自由貿易協定)交渉では農産品の輸入規制緩和などで鋭い対立が続き、合意は困難となっており、目標にしていた2014年中の合意は難しい情勢だという(2月20日付日本経済新聞記事)。
 
さらに円安でも日本の輸出が伸びず、円安による輸入価格の高騰もあり、1月の日本の貿易赤字は1979年以来35年間で最大の2.7兆円に拡大し、問題化している。米国の要請を入れてTPPで関税を下げたり、撤廃すると、輸入が急増し、日本の貿易赤字に加え、経常収支も長期的に赤字に転落する危険性がある。
 
そもそもTPPは米多国籍企業とそれに迎合する日本経団連などの大企業、財界の利益のために日本の農民、国民に負担を押し付け、はたまた国民の食の安全さえも脅かすことになりかねない。政府の試算によるとTPPにより日本が受ける利益は10年でわずかに3.2兆円(年間3200億円)と微々たるものである。米多国籍企業に引きずられ、TPPで日本が譲歩し、交渉妥結を急げば、平成の不平等条約として日本は悔いを千載に残すことになるだろう。
 
かかる背景からシンガポールでのTPP関係閣僚会議は日米での自動車関税の撤廃時期、日本の農産品の市場開放など甘利経済再生担当相・TPP担当相とフロマン米通商代表との交渉は合意に至らず、合意はさらに4月以降に先送りされることになった。日本は日本の国益を重視し、妥結を決して急ぐべきではない。

中川十郎(なかがわ じゅうろう)
1935年、肝付町出身。1959年、東京外国語大学外国語学部イタリア語学科卒業後、ニチメン(現双日)に入社。長年にわたる海外勤務の後、大学教授に転身し、愛知学院大学商学部や東京経済大学などで教鞭をとる。その一方で、日本ビジネス・インテリジェンス協会を設立し、会長を務める。

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