【きもつき情報局】アベノミクスの現状

7月28日、東京で米コロンビア大学国際関係・公共政策大学院(SIPA)、ビジネススクール合同の会合があった。昨年、SIPA学科長に任命されたメリット・ジャノウ教授の来日を記念して開催されたものである。
 
コロンビア大学は将来に備えてニューヨークのマンハッタンに新校舎や40の研究所を創設。21世紀を見据えた大学に相応しい未来研究のために最高級、最先端の教育と研究を目指すという。
 

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 コロンビア大学のメインキャンパス
(Photo by Momos from Wikimedia Commons)
 
この40の研究所は情報、エンジニアリングと融合した起業を目指す研究やサイバーセキュリテイ、さらに各人の症状に応じた個人医療、健康医療研究、エネルギー研究、投資研究など、大学院各学科をまたぐハブとして新設され、4000人の大学院生の教育、研究に特化する意欲的な研究所だそうだ。
 
その中にはビッグデータ時代に備えたデジタルデータ分析研究所なども創設される。研究の主力は国際教育、国際金融、国際公共政策研究、国際経済開発、自然科学、エネルギー、ICT, 健康医療などである。一方、国連と協力し、発展途上国の経済開発などの共同研究も行うという。
 
ジャノウ教授はWTO上級紛争委員も歴任し、国際貿易、国際投資研究の第一人者だ。コロンビア大学法科大学院ではケネデイ駐日大使と同級生だった。父上の仕事の関係で幼少時代を横浜で過ごしたこともあり親日家でもある。
 
1995年のWTO創設以来、筆者も船積前貿易紛争処理委員を委嘱されているところより、ジュネーブや、イタリア・コモでのWTO創設10周年記念式典にはWTO上級紛争委員長も歴任された谷口元東京経済大学教授ともども同席した。またコロンビア大学留学時代はジャノウ教授とはビジネススクールの会合などでご一緒し、旧知の間柄で、今回もジャノウ教授とは久しぶりの再会を楽しんだ。
 
会合では、ジャノウ教授の挨拶に続いて、同教授の司会で「アベノミクスの現状」と題するパネルディスカッションが開催された。パネリストはゴールドマンサックスの役員を歴任し、アジアにおいて最も活躍している女性10人にも選ばれたキャシー松井さんと伊藤隆・東京大学教授であった。
 
松井さんは特に日本の税制の問題点に触れ、日本の税徴収能力は世界でも最低の部類に属し、しかも企業の70%が税を納めていないことや外国ではあたり前の納税用社会保障番号(いわゆるMy Number)が未だに整備されていないことなど、日本の税収制度には構造的欠陥があることを指摘された。筆者も同感である。加えて、日本では宗教法人が納税していないことも大問題である。
 
一方、伊藤教授はアベノミクスを第一の矢、第二の矢、第三の矢とも成功していると過大な評価を与え、かつTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)も推進すべきと安倍首相の政策に全幅の賛意を表明した。
 
これに対し、ジュノウ教授は慎重な見方であった。TPPについても米議会のTPA(Trade Promotion Authority=貿易促進権限)がオバマ大統領に付与されていない現状より、安倍首相はTPP合意に積極的だが、米議会では問題があることを指摘し、楽観を戒めていた。
 
元商社マンとしての筆者の意見も伊藤教授の楽観的な積極論よりもジュノウ教授の慎重論に賛成である。そもそも貿易論の専門家でない伊藤教授やその他の貿易実務の経験のない大学教授などが両手をあげてTPP推進論を説くことは問題である。
 
机上の理論だけでなく、貿易の実践論的な立場からもTPPの日本への得失の慎重な考究が肝要だ。
中川十郎(なかがわ じゅうろう)
1935年、肝付町出身。1959年、東京外国語大学外国語学部イタリア語学科卒業後、ニチメン(現双日)に入社。長年にわたる海外勤務の後、大学教授に転身し、愛知学院大学商学部や東京経済大学などで教鞭をとる。その一方で、日本ビジネス・インテリジェンス協会を設立し、会長を務める。
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