肝付町で活動している少年サッカークラブ、S.S. Advance(S.S.アドバンス)の今年初めての練習、初蹴りが1月4日、肝付町後田にある専用グラウンドで行われました。
畑を転用してつくられた専用グラウンド(向こうに見えるのは高隈山)
同クラブは大阪で不動産業を営んでいる肝付町出身の﨑森定文さんが地域の活性化を目指すとともに、子供たちを育成しようと3年前の平成22年1月4日に設立したもので、現在、肝付町や鹿屋市の小学生を中心に30名以上が所属し、週5回の練習に汗を流しています。
大隅地区に30以上あるというサッカーチームの中でも同クラブには大きな特徴があり、それは南米アルゼンチンのプロリーグで活躍した元サッカー選手が監督を務めているということです。パラグアイ出身のモンティエル・アロンソ・ロランド・バシリオさんがその人で、「このクラブから10年後にはプロ選手を出したい」という﨑森さんの「本気度」が伝わってくる人選といえます。
メンバーの名前を呼んで指導する監督のモンティエルさん
「目標はまず大隅で一番のチームになることですが、技術面だけの指導では足りません。もっと大事なのは精神面での強さを育てていくことです。貧しい環境におかれてハングリー精神の旺盛な南米の子供たちに比べて、日本の子供たちはめぐまれていますので、その面が弱いように思います」
そのようにチームの課題と目標を見事な日本語で話してくれたモンティエルさんですが、そもそも彼を招聘(しょうへい)するきっかけになったのが、﨑森さんの息子で同クラブのコーチを務める大地さんの存在です。地元の中学を卒業後、南米にサッカー留学した際、パラグアイで在籍したチームの監督だったのがモンティエルさんだったのです。
そのモンティエルさんの下、大地さんを含めて同チームには3名の専属コーチがいます。その陣容を見ただけでも本格的なクラブチームだといえます。
コーチの﨑森大地さん
﨑森さんは「今の子供たちは生活の中で規律を守るということが、なかなかできていない。それぞれが規律に耐えられる、強さを持てるようにならないといけません。サッカーは勝つことだけではありません。勝つことは結果でしかありません」と普段の生活態度も含めた厳しい指導方針を掲げています。
もちろん、それだけ厳しくしつけるのは子供たちへの愛情があるからこそで、子供たちの健康にも気遣い、グラウンドの芝生の整備には除草剤や農薬を一切使っていません。子供たちの身体に余計なものがはいらないようにとの彼なりの配慮が働いているのです。
子供たちの練習を熱心に見守る﨑森定文さん
ちなみに﨑森さんはすでに地元に農業法人を立ちあげており、将来的には地元に戻り、安心・安全な米や野菜づくりを中心とした農業とサッカーの両輪で地元に貢献したいといいます。今年の4月には中学生のチームをつくる予定で、「いずれは大人の、九州リーグに出せるチームをつくりたい」と夢はふくらみます。
この日、30人近くのメンバーが集まった初練習では、子供たちだけの練習に続いて保護者チームとの「練習試合」が行われました。さすがにプロ選手の下で鍛えられているだけあって、随所にするどいプレーが見られます。大人顔負けのシュートやパスワークをする子どももいたりして、「クラブができてまだ3年ですが、大隅地区ではだいたいトップスリーの中に入っています」(崎森さん)というだけのことはあります。
その実力の前には大人たちも時折本気のプレーを見せますが、中には子供たちから「大人げない」というブーイングを受ける人もいるほどです。
時折大人顔負けのプレーをするちびっ子サッカー選手
試合が終わると、ゴールやコーンを片付け、グラウンドに向かって「ありがとうございました」と一礼し、練習終了です。そうした光景からは、礼儀もまたしつけの大事な一部だという指導が伝わってきます。
キャプテンの廣口力希(ひろぐち りき)君は「中学に上がっても続けるので頑張りたいです。もっと仲間も増やしたい」と今年の抱負を語ってくれました。
今年の「初蹴り」が無事に終わった後の「締め」は、お待ちかねの石臼(うす)と杵を使った餅つきです。子供たちは「もっと腰を入れて」などとアドバイスを受けながら交代で杵を握って餅をつき、つきあがると我先にと餅を丸めては、おいしそうに頬張っていました。なかには「生で食べるの?」と初めてつきたての餅を食べた子供もいたようです。
お餅と一緒に保護者が用意した温かい豚汁もふるまわれ、練習中は厳しい顔を見せる監督やコーチたちも子供たちと一緒に笑顔でくつろいでいました。
気合を入れての餅つきも訓練の一環!?
それにしても私たちの町、肝付町にこのような本格的なサッカーチームがあったとは、正直、この日取材するまで知りませんでした。
できれば、もっと多くの町民に知ってもらい、将来このきもつきからプロの選手が誕生するよう、みんなで応援していきたいですね。
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