【きもつき情報局】きもつきから新しい建築の風を起こす

朝方の激しい雨がようやく上がり、田園地帯に春らしい陽気が戻ってきた3月20日午後、いくぶん水量の増した肝属川沿いに建つ山佐木材の本社に県内外の専門家が集まってきました。
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山佐木材の工場を見学する県内外から集まってきた専門家
やってきたのは大学関係者や企業の担当者。この日開催される「ある研究会」の設立準備会の会合に参加するために鹿児島市や福岡県から集った建築分野の専門家たちです。
その研究会が扱うテーマは、超高層ビルの建設において床材として木材を使うというもので、高層建築の床材は鉄筋コンクリートという「常識」からすれば、きわめて野心的な取り組みといえます。
研究会を呼びかけたのは地元肝付町にある山佐木材の佐々木幸久社長です。
きっかけは、2年ほど前、佐々木社長が目にした「建築分野における木材活用のシナリオ」と題する論文。その中で筆者の稲田達夫教授(福岡大学工学部建築学科)が、オフィスビルなどの中大規模建築物に木材を大量に使用するメリットや手法について述べているのを読み、興味をいだいた佐々木社長が稲田教授に連絡し、福岡で初対面。その後のやり取りを経て、今回の会合が開かれることになったということです。
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「きっかけ」となった稲田教授の論文
出席したのは稲田教授のほか、同じく福岡大学から重松幹二教授(化学システム工学科)と渡辺浩准教授(社会デザイン工学科)、九州大学の村瀬安英名誉教授、また鹿児島大学からは塩屋晋一教授(工学部建築学科)、企業からは接着剤と建材を扱うオーシカの九州営業所の梶原茂所長、そして山佐木材からも佐々木社長をはじめとする数名が参加しました。
冒頭、佐々木社長が研究会の設立のいきさつや目的などを説明しつつ、「異なる専門分野を持った人々がこうして集い、知恵を出し合うことで、建築の分野に新しい手法をもたらしたい」と抱負を語りました。
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会の目的などについて説明する佐々木社長
次に、研究会発足に向けた動きのきっかけとなる論文を執筆した稲田教授が、超高層ビル建築で木材を使うことの意義について解説、「そのような建築物に木材を大量に使うことで木材自給率の40%を達成するとともに、国土保全や地球環境、さらには災害対策の側面からも大きなメリットが得られる」と強調しました。
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超高層建築に木材を使用することのメリットについて説明する稲田教授
続いて九州大学の村瀬名誉教授が木材の特性とその切削技術について説明した後、鹿児島大学の塩屋教授が、ある興味深いデータを発表しました。今回の会合でもっとも注目を集めたデータといえるでしょう。
塩屋教授がこれまで数年にわたり行なってきたという実験は、木材に鉄筋を組み込み、強い木造建築を実現するというもので、データを見る限り、鉄筋を組み込むことで木材の利点を生かしながらもその弱点を補強することが可能となるという結論が引き出されています。つまり、鉄筋で補強された木材であれば高層建築物への使用の道が開けるということを意味する重要なデータです。出席者からはデータについての質問が相次いで出されました。
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実験データについて解説する塩屋教授
会合ではさらにオーシカの梶原所長から接着剤に関する詳しい説明があったほか、山佐木材の村田忠製造部長からは、同社のCLT(クロス・ラミネイティド・ティンバー)と呼ばれる集成材を使った工法についての取り組みや今後の目標などが紹介されました。
出席者からの発表がひと通り終わった後は、いよいよ研究会発足に向けた話し合いです。
さまざまな意見が出た中から決まったのは、研究会の名称をひとまず「超高層ビルに木材を使用する研究会」(仮称)とし、稲田教授と塩屋教授を中心として、当面はオフィスビルの床材として使える鉄筋と組み合わせた商品を開発し、その工法を啓蒙していくことです。
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研究会設立に向けた話し合いを行うメンバー
今後は定期的に会合を持ちながら、異なる分野の専門知識や技能を融合しつつ、建築分野における新しい工法の確立という野心的な取り組みが本格化することになります。福岡や鹿児島の大学の専門家の力を借りながら、きもつきという辺境からいったいどのような工法、そして商品が開発されていくのか――
きもつき情報局では、この興味深い取り組みに今後も引き続き注目していきたいと思います。
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