【きもつき情報局】空き家がアートの空間に変身した夜

小雨降る6月5日の夜、カエルの鳴き声が響くなか、肝付町の川上地区にある空き家に地域の住民などが三々五々集まってきました。
 
この夜、一夜限定で行われる「あるイベント」に参加するためです。
 
そのイベントとは彫刻をメインとする作品展、「空き家が小さな美術館になる?!」と「『傾く家』について」と題するトークイベント。開催したのは、大分県竹田市を拠点に活動し、多目的ギャラリー「傾く家」を主宰する美術ユニット「オレクトロニカ(Olectronica)」の加藤亮さんと児玉順平さんです。
 
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空き家の一室がこのとおり立派なギャラリーになっています
 
2人が川上地区で今回このようなイベントを開催するきっかけをつくったのは、同地区に移り住み、芸術を核とした地域活性化活動を続けているコンテンポラリーダンサーのJOUさんと視聴覚作家の松本充明さんです。
 
2人が企画した「川上地区 空き家活用アートプロジェクト」の一環として開かれたもので、地域にある空き家を利用してどのようなことができるか、その可能性について提案することを目的としています。
 
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出窓に並んだ作品を熱心に見つめる来場者
 
会場となった空き家の中では出窓や棚、押入れといったあらゆる空間に作品が展示されています。
 
高齢化率の高い地区だけに集まってくる人の多くがお年寄りでしたが、「細かもんじゃ(小さいもんだね)」「どげんしてつくったたろかい(どうやってつくったんだろうか)」「ようできるもんじゃ(よくできているもんだ)」と初めて見る作品に興味津々で、なかには小さくて細かい一木彫りの作品をもっとはっきり見えるようにと懐中電灯で照らしてじっくり見る人もいました。
 
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懐中電灯で照らし出された小さな作品
 
また、古い棚を見て「こめころ勉強しおったような本棚じゃなかか(小さい頃勉強していた本棚のようだね)」と懐かしそうに話す人もいました。
 
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押し入れの空間を利用して展示された作品
 
午後7時半過ぎから始まったトークイベントでは、約20人が畳の部屋に集まり、加藤さんと児玉さんの竹田市での活動に関する説明に耳を傾けていました。
 
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畳の部屋で開かれたトークイベント
 
2人は、築70年の古い民家を住民と外部から訪れた人が芸術を一緒に楽しめるようにと作品発表の場としてだけでなく、交流の場や多目的スペースとしての利用を目的に、窓ガラスなどそのまま再利用しながらギャラリーに改装していった様子を紹介。また、傾いた柱をそのまま生かしたことからギャラリーの名が「傾く家」となったことなどを説明しました。
 
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地元での活動について話す加藤さん(左)と児玉さん
 
また、2人を呼び寄せた松本さんからは、今回の会場となった空き家を同じように活用できるのではないかと改装を目的に2人を招いたことや、予想よりも空き家の状態がよかったために改装ではなく徹底的に掃除をして、どのように活用するかの例を示そうと、急きょ、展示をすることになったことなど、今回のイベントについての補足説明や今後の活用方法についての提案がありました。
 
来場者からは「若い人にたくさん来てもらいたい」「川上小学校で保管されている昔の農機具なども活用できないか」といった声が出されました。
 
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トーク後に開かれた交流会
 
イベントに参加した肝付町出身の大学生、日野雅継さんは「昔からあるものを活用するという、このような活動がもっと広がればいいですね。今回、地域の人たちが、こうした形で町おこしをしているのを知って、いつかは自分も故郷に戻り、こういう活動にも参加したいと思いました」と語り、アートを通して地域を盛り上げていこうとする活動に興味を持ったようです。
 
オレクトロニカの加藤さんは「急に決まったイベントでこんなに人が来てくれるとは思いませんでした。まちづくりには人の盛り上がりがないといけないと感じているのですが、みなさん熱心で、人の部分で可能性を感じました」と話すとともに、懐中電灯を使って作品を見るという来場者の「予想外の反応」も楽しめたようです。
 
川上在住の芸術家の呼びかけで開催された一夜限りのイベント――語らいは夜の11時過ぎまで続いたのでした。
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