故郷肝付町での就農を決意し、勤めていた日系企業を退職した永野浩章さん(38)。帰国後、肝付町農業振興センターの「雇用就農制度」で農業の基礎を学びつつ自らの畑で実験的にエゴマとゴマの栽培を試み、雇用就農制度の修了した2017年4月、本格的な栽培へ踏み出した。1年目は実験的栽培を継続し、2年目となる今季から商品化に着手する。
そんな永野さんがまず取り組んだのが畑の土づくり。土づくりといえば肥料や堆肥など栄養分を与えるイメージが強いが、永野さんが着目するのは土の中の微生物だ。
永野さんの畑は微生物が豊富だ
「作物が根を張る土畑は人間の体に例えると腸と一緒です。腸内の細菌環境を整えることが大事。多種多様な菌が共生している土が理想です」と、菌の餌となる米ぬかや、焼酎の酒粕を利用した土壌改良を試みている。
就農2年目にはシイタケの菌床を砕いたものをすき込む新たな方法も取り入れた。
菌床はオガクズなどの木質基材に米糠などの栄養源を混ぜたブロック状の塊に種コマを打ち込んだもので、土壌改良に最適だと考えて、近くの栽培施設から廃棄処分となる収穫済みの菌床を譲ってもらった。
畑に撒いた菌床を均等にならしていく
「今年一年は、このまま寝かせるので効果を確かめられませんが、良い結果につながると確信しています」と自信を見せる。
独自で情報を集めての試みだ。少しでも良いものをつくり、市場に提供するための勉強は欠かさない。
ちなみに菌床を撒いてからしばらくすると畑一面にシイタケが生えてきた。思わぬ副産物の登場に「シイタケ畑のようだ」と近隣で話題になった。その後、トラクターで畑にすき込むとシイタケは生えてこなくなったという。
まだ至る所にシイタケが生える土壌改良中の畑
永野さんは今年の5月中旬、エゴマ1.5ha、ゴマ(黒、金)50aに種をまいた。
その後の作業は、ひたすら続く除草作業だ。発芽した苗の生育を促すための地道な作業。定期的に畑に通い、畝と畝の間に生えてくる雑草を除草していく。除草剤を使えば30分で終わる作業も、手作業だと2~3日は普通に費やしてしまうという。そこに農薬に頼らない農業を志す永野さんのこだわりがある。
種まき前のエゴマ
夏の終わり。手塩にかけて育てた作物は腰上ほどの高さに成長した。このころになると雑草に負けないくらい強くなっている。あとはタイミングを見て収穫していく。
9月に入り、ゴマの収穫が始まった。今年から導入したコンバインで淡々と刈り取っていく。「昨年までは手狩りで時間を割かれていました。この先、作付面積を増やしていくためには機械化が必要です」と話す。
ゴマ畑での収穫の様子
10月にはエゴマの収穫も無事に終わった。「今年は台風が多く、どうなるか心配でしたが、無事に収穫を終えることができた」と胸をなでおろした。
エゴマ、ゴマとも前年の収量を超えた。商品化への期待が膨らむ就農2年目の収穫となった。
その3に続く
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