【きもつき情報局】池之園の祇園祭

祇園祭は八坂神社のお祭で、悪疫退散を祈願するために始まったといわれており、山鉾巡行で有名な京都をはじめ全国各地で行われています。
鹿児島県では、鹿児島市清水町の八坂神社で行われる「おぎおんさぁ」が最大のものですが、肝付町新富の池之園地区にある八坂神社でもささやかながら地域の伝統行事として毎年行われています。
(池之園の八坂神社)
池之園地区は肝付町と鹿屋市串良町との境目、かつて蛇行して流れていた肝属川沿いの水田地帯に位置します。八坂神社の裏手には埋められて以前よりも小さくなっていますが、かつては川の一部だったと考えられている池があり、境内には地域内のあちらこちらで祀られていた水神や田の神、祠などが合祀されています。肝付氏の五輪塔の一部と思われるものもありますが、詳しい由来はわからないそうです。
(境内に合祀されている石塔。水神塔には昔からしめ縄を飾っているそうです)
(田の神像も合祀)
(「見ざる言わざる聞かざる」が彫られた庚申塔と思われる石塔の一部)
今年の祇園祭は6月19日の午後に行われました。この日は朝から雨が降っていましたが、神事が始まる頃にはほとんどやんでいました。
地域の人々が集まると、社殿にしめ縄を張ったり、竹に紙垂を挟んだりして祭りの準備が始まります。
(準備をする地域のみなさん)
(しめ縄にも紙垂を付けます)
神前には酒やお供え物のほか、チガヤの束や鉦・太鼓、竹も用意されました。このチガヤは鉦踊りのときに頭に巻くためのものです。この風習について調べてみると詳しくはわかりませんでしたが、巻くと「頭がよくなる」といわれている地域もありました。
(チガヤの束と鉦踊りに使う太鼓・鉦も準備)
隣の公民館で料理の支度をしていた女性たちも社殿に集まると、神事が始まります。神主が祝詞を奏上し、お祓いをした後、参列者が次々に玉串を捧げ、お神酒を口にします。

(お祓いをうける地域のみなさん)
神事が終わると、担当の二人が紙垂をつけた竹を2本ずつ、集落の出入り口にあたる道路6箇所に立てに向かいました。
(紙垂をつけた竹を主要な道路の脇に立てます)
(池之園周辺には水田が広がります)
その後、社殿の前で、チガヤを巻いて大きくて軽い親鉦と重たい子鉦、そして太鼓の三つを打ち鳴らしながら、「けそんじゅうしち」という恋唄をうたい、リズムに合わせて足を振って踊る鉦踊りを奉納しました。
(社殿の前で鉦踊りを奉納)

 (頭にはチガヤを巻いています)
この唄は隣の下之門地区にも歌詞は少し違うものの伝わっていて、「もとは同じだったのではないでしょうか」と太鼓を打った渡口旦さんが教えてくれました。
(「けそんじゅうしち」の歌詞)
(鉦を高く掲げて打ち鳴らします)
3年ほど前から鉦打ちをしているという渡口大作さんは40歳。同年代の仲間二人と一緒に始めました。
「慣れてきましたが、まだリズムだけで唄をなかなか覚えられません」と話します。
この日は他の二人が用事で参加できませんでしたが、三人でできるように鉦打ちの練習をしたそうです。
地区の振興会(町内会)長の倉田強さんは「せっかくずっと続いてきているのだから、若い人たちに協力してもらってこれからも続けていきたい。後継者づくりが大事だと思います」と語り、地域の伝統行事の継承を願っていました。
(鉦踊りのあとはみんなで飲んで食べて楽しみます)
池之園ではほかにも、9月に行われる水神祭などの伝統行事が残されています。
※鉦踊りの様子をスマホで撮った動画はこちら
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