※現在、通りを挟んだ正面に移転しています。
かつては町内外からの買い物客でにぎわっていたという旧高山町(肝付町高山地区)のメインストリート。それが今ではすっかり廃れてしまい、日中でも人通りはまばらなほどです。
そんなひっそりとした通りの一角でひときわ異彩を放っているのが、地元の人はもとより、町外にもファンを持つ「米沢食堂」です。店の入口には「大衆食堂」と書かれたのれんがかかり、そののれんをくぐって一歩店内に足を踏み入れると、まるで昭和の時代にタイムスリップしたかのような温かくてなつかしいレトロな雰囲気が漂っています。
なんとも懐かしく温かい感じがする米沢食堂
語り継がれるエピソード
現在の食堂を切り盛りするのは三代目の店主、米沢一正さんです。およそ80年前に米沢さんのおじいさんが創業して以来、伝統の味を受け継いできました。
店内の両脇には小さな座敷席があり、その間にテーブル席が並んでいます。営業時間は日中のみということで、お昼時になると「これだけの人がいったいどこから出てきたのだろうか」と思わせるくらいのにぎわいで、いつも混み合っています。
お昼時はたいがい満員です
そのテーブルやいすも含めて、店内に置かれたほとんどすべての品々が歴史を感じさせてくれるものばかりですが、とりわけ店の歴史に深くかかわっているのが、壁際に飾られている大きな「左馬」の駒です。
こちらがその「左馬」の駒
「左馬」の駒とは商売繁盛をもたらす縁起物とされていて、米沢食堂にある駒は、実は米沢さんの親族で大雄(だいゆう)という元大相撲力士に贈られたものだといいます。この力士にあやかって一時は「大雄食堂」と称していたこともあり、その当時の店名入りの皿などが今も残っています。
時代を感じさせてくれる皿
そうしたエピソードがあるのも老舗ならではのことといえますね。
地元食材を使い、手頃な価格で
創業当時、うどんやそばだけだったというメニューも、今では定食や丼物など多彩な品ぞろえになっていますが、一正さんの奥さん、チリ子さんが嫁いだ40年ほど前に比べてあまり変わっていないといいます。
豊富なメニュー
そんな昭和の香りを今に残す米沢食堂のおすすめは、なんといっても魚フライ定食(500円)です。ホクホクの魚フライに野菜とつけもの、そしてご飯とみそ汁がついてこの値段。やみつきになっても不思議ではありません。
うーん、ホクホクの魚フライがたまりません
ほかにもくずかけちゃんぽん(500円)や手打ちそば(大が500円、並が400円)など、たくさんありますが、そのどれもが手づくりで、また使われている食材も自然豊かな地元でとれたものばかりです。
ちなみに、お店で出しているご飯は、チリ子さんの妹さんがつくるきもつき産の米を使っているということで、安心の地元食材を新鮮なうちに、なおかつ手ごろな値段で食べられるというのがこの食堂の大きな魅力のひとつになっています。
ボリュームに込められた愛情
さらに、この食堂にはもう一つの大きな魅力があります。それが、特に男性客に喜ばれる量の多さです。普通に出しても、満腹になるほどで、食欲旺盛な男性にも喜ばれています。
そのため、店を訪れるのは多くが男性客。お店の人によると、それだけのボリュームにするのは、「昼からの仕事でがんばってもらうために、ここでしっかり食べていってほしい」というお客さんに対する愛情が込められているからだといいます。
写真で見ただけでも食欲をそそられます
もちろん、子供や女性客、お年寄りには食べ切れるように量を調整しているとのことで、そうした気配りも老若男女問わずお客さんの胃袋をつかんで離さない人気の理由の一つかもしれません。
忘れられない「ふるさとの味」
さまざまな客層から愛されている米沢食堂のお客さんの中には、帰省した際には必ず立ち寄るという地元出身者もいるそうです。彼らの多くが小さいときから食堂の味に慣れ親しんで育ったために、店の味がそのまま「ふるさとの味」になっているのかもしれません。また、通いなれた食堂のある風景を目にすることで、故郷に帰ってきたことを再確認し、その喜びを実感できるのかもしれません。
世代を超えて、地域を超えてたくさんのお客さんに愛され続けている米沢食堂。その変わらない味と風景をいつまでも残してもらいたいものです。
みなさんも肝付町へお越しの際は、地元にしっかり根を張り、レトロ感たっぷりの米沢食堂で、「きもつきの味」をぜひ味わってみてくださいね。
【店名】 米沢食堂
【住所】 鹿児島県肝属郡肝付町新富20
【電話】 0994-65-2128
【営業時間】 10時から17時まで
【定休日】 定休日:日曜日
【主なメニュー】 魚フライ定食 ¥500 くずかけチャンポン ¥500 手打そば ¥400(並) ¥500(上) オムライス ¥500 ミックスフライ定食 ¥750 など
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