さぁ、これから肝付町の見どころを案内していきましょう。
まずは町最大のイベント、やぶさめ祭の行われる四十九所神社を訪れました。およそ900年にわたり、連綿と受け継がれてきたやぶさめの説明に興味津々といったふうで、なかには「自分もやってみたい」という学生もいたほどです。
残念ながら射手は男の子に限定されるためその願いはかないませんが、来年はぜひ本場のやぶさめ祭を見にきてもらいたいものです。
四十九所神社で記念写真
その四十九所神社の境内でひときわ輝いていたのが、社殿の脇にそびえ立つ美しく黄金色に染まったイチョウの木でした。孫冰さんと李東霞さんは、そのイチョウの下でポーズを取って何度もカメラのシャッターを切っています。
たぶん、その写真を中国にいる家族や友だちに送るのでしょう。「日本の田舎にはこんなに美しいイチョウがあるよ」といって……
いい写真が撮れたかな?
すぐに確認です
旅の始まりが遅かったせいか、もうお昼の時間を過ぎています。昼食の場所は、きもつき情報局でもイチオシ!の「OKOMEYAキッチン」です。
お店の近くのバス停でバスを降りると、バス停に設けられた椅子に腰掛けていたおばあさんにみんなが次々にあいさつをしていきます。えらいですね、ちゃんとあいさつができるなんて。これには、おばあさんも満面の笑顔で応えています。まさに笑顔に国境はない――そんな感じです。
そろって店内に入ると、バスの運転手さんを含めた総勢12人でお店の半分を占拠する形となりましたが、待ち時間に、李さんが何かを手に持った孫さんを撮影しています。持っていたのは「御予約席」の文字が書かれた木製のプレートです。「中国ではたいていは紙で、こんなにきれいなものはないです」といいます。意外なものが喜ばれているようです。
しばらく待っていると、食事が運ばれてきました。二人がそば定食を頼んだほかは、全員が日替わり定食。今日のメインのおかずは魚フライです。
OKOMEYAキッチンで昼食
食事時となると、それまでのおしゃべりがぐんと減り、食べることに集中です。味だけではなくて、器もかわいいと好評です。
ちなみに、朝食抜きだったという李さんはおかわりまでして完食です。薛超月さんも「お米がおいしい」とすっかり気に入ったようで、あとから「本当はおかわりしたかったけれど、恥ずかしくてできなかったです」と打ち明けてくれました。乙女心は中国も日本も変わらないようです。次に来店したときは、恥ずかしがらずにおかわりしてくださいね。
ちなみにその日のメニューで一番人気だったのは、バターを使ってお菓子風に味つけされた甘いカボチャです。やっぱり女の子は甘いものに目がないのかもしれませんね。
せっかくなのでお店の前で記念撮影です
さて、味にも雰囲気にも大満足した昼食の後は、樹齢1300年といわれる塚崎の大クスを見に行きました。民家の間の狭い路地を抜け、鳥居越しに見えてきた大木の姿に、わあっという歓声が自然に上がります。
細い路地の先に大クスがあります
学生たちは見学用に設けられた木製の階段を上り、次々と幹に触れていきます。そして太古の昔からそこにそびえ立つ大クスのパワーに圧倒されるとともに、そのパワーをわけてもらっているようでした。
また、その木のまわりを歩いて、大クスがもつさまざまな表情を楽しんでいる様子でした。
さぁ、みんなでパワーをわけてもらいましょう
今回の旅で塚崎の大クスがいちばん印象に残ったというリーダーの米山喜美子さんは、「細い路地を通ってどこに行くのかと思っていたら、視界が急に開けて大きな木があったので、インパクトがありました。また、見る方向によって、木の表情が違うのも面白かったです」と話してくれました。
さらに志布志市出身の宮下真美さんも「初めて来ました。知らないとなかなか行けないので、今回、来ることができてよかったです」と、きもつきの「隠れた名所」に感動したようです。
とにかく巨大です
気に入ったのは大クスだけではなかったようです。留学生の孫さんが鳥居のすぐ脇にある空き家を撮影しています。主がいなくなった農家で、母屋のほかに牛小屋もあります。そんな光景にも、なにやら心ひかれるものがあったのでしょうね。
そうこうしているうちにも時間はどんどん過ぎていきます。次の訪問地は、はやぶさの母港、内之浦宇宙空間観測所(JAXA)です。帰りのフェリーの時間を考えると、そこでの滞在時間は30分少々しかありません。
急がないといけません。
あいにくこの日は観測所を見学するグループが重なり、午後3時以降の案内ということでしたが、幸い、それより少し前に観測所のガイドさんの説明を聞くことができました。ラッキーでした。
まずは、ミューセンターと呼ばれる、あのはやぶさを打ち上げた場所でガイドさんと落ち合い、そこでは、来年に予定されているイプシロンロケット打ち上げに向けて改修中の発射装置を見学、その後は観測ロケット発射場でランチャー(発射)ドームと呼ばれる施設で発射台が実際に動くところを見せてもらいました。
来年イプシロンロケットが打ち上げられる発射台を見学
さらにコントロールセンターに移動して建物内部を見せてもった後、最後にわずかな時間でしたが、巨大なパラボラアンテナを見て帰路についたのでした。
こうした日本のロケット開発の現場を見学した学生たちの中で、もっとも関心を示していたのが留学生の薛さんでした。その理由をたずねると、「こうした設備を間近に見られるなんて、すごいです」とオープンな日本の施設のあり方に感激しているようでした。
コントロールセンターでも記念撮影
おっと、もうそろそろバスに戻らなければならない時間です。内之浦から垂水港までは1時間半ほどかかります。ちょっとした長旅です。
せっかくなので、その時間を使って、今回の大隅訪問の感想を一人ずつ聞いてみることにしました。
いろいろな感想が出た中で、ほとんどの人に共通していたのが、「大隅の自然の豊かさ」でした。とりわけ、母国での環境保護がまだ十分ではないと思われる中国からの留学生たちは、次のように述べて、日本の自然環境のすばらしさに感動しているようでした。
「日本は環境がきれいです。自然を守ることを大切にしていると思います。私も今日の体験を大切にして故郷の家族に伝えたいと思います」(李さん)
「日本人の自然に対する意識はとても高いです。その点は中国も日本から学ぶべきだと思います。中国はとても汚染が激しくて、きれいな海を日本で初めて見ました」(孫さん)
「海がきれいで、故郷の青島(チンタオ)の海とは違いました。日本の景色は人工的なものが多いけれど、大隅は自然のものが多いと感じました」(薛さん)
最後に感想を聞いた冨永野々花さんは「一日通して思ったのは、大隅は自然の力がすごいということです。海の中にある荒平天神も吾平山上陵も大クスもとても自然を感じました。本当にいいところなので、みんなにもっと知ってもらいたいです」とまとめてくれました。
垂水港で最後の記念撮影
というわけで、鹿児島県立短大の中国人留学生と日本人学生による大隅の旅もこれで終わりです。案内役としてはもっとたくさんの見どころを案内したかったし、またお年寄りも含めて、地域の人たちに会って話をしてもらいたかったのですが、いかんせん、時間が足りません。でも、ほとんどの人が「ぜひまた来てみたい」といってくれていますので、いずれ続きをする機会があるのではないでしょうか。
この広くてすばらしい大隅の魅力にちょっぴりでも触れてもらい、そのすばらしさに感動してもらえたたけでも案内のし甲斐があったというものです。ぜひ次の機会にまた、いろいろなところを案内したいと思いますので、みなさん、そのときは連絡してね。
それでは、また会いましょう!再見!
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