肝付町には、各地域で大切に伝承している伝統行事がたくさんあります。
今回ご紹介する岸良地区の「テコテンドン」もその一つで、同地区にある平田神社が毎年正月2日に開催するお祭りなのですが、ちょっと変わったといえば変わったお祭りなんです。変わったというより「難儀な」といったほうがいいでしょうか……
それでは早速、1月2日に行われたテコテンドンの模様をレポートしていくことにしましょう。(といっても今回は残念ながらスタッフは参加することができずに、実際に参加した肝付町役場企画調整課、商工観光係の倉義経さんにお話をうかがいました。)
テコテンドンを今に伝える平田神社
800年以上の歴史を持つといわれる、このテコテンドンは岸良の北岳(747メートル)山頂にある北岳神社に鎮座する神霊を徒歩で迎えに行き、常緑樹のサカキの束に赤い産着を着せて人の形をかたどった「ヒモロギ」に移して、麓の平田神社に迎え入れるという祭典。五穀豊穣や無病息災を祈願するものとされていますが、その名称の由来や神霊の名前も不詳という不思議なお祭りです。
倉さんによると、この日は寒さがやわらぎ、しかも快晴とあって参加者は軽快な足取りで午前8時に平田神社を出発。本来なら祭礼の列には青少年もお供することが古くからの習わしとされてきましたが、今年は都合がつかず大人だけでの出発となりました。
山頂までの道のりは登山道として整備されていますが、普段はあまり人が入らないということもあり、下草などで道すじがはっきりしません。一行は草木を払いながら険しい山道を進んでいきます。
道なき道をひたすら歩いていきます
休憩を交えながら約2時間半かけて山頂に到着すると、そこには一般的な神棚ほどの大きさの祠(ほこら)があります。その背後には一行を出迎えるようにして巨岩がそびえ立ち、祠の中には神霊とされる11個の石が並べられています。
この神霊、山の神だということは伝わっていますが、正確な名前はわからないということで、一説には猿田彦神(さるたひこのみこと)、また景行天皇だという説もあります。
赤い産着を着たヒモロギと北岳神社の祠
その祠の前で神歌を歌ってヒモロギに神霊を移します。また神事と同時進行で現場では餅が焼かれます。これも慣例の一つで、いわば一行の昼食のようなものでしょうか。
その後は巨岩によじのぼり、そこから見渡す岸良地区の絶景を楽しむことになるのですが、実際にのぼった肝付町観光協会の尾身健さんが「つかむものがなくて究極のロッククライミングでした」と振り返ってくれたように、かなり危険度の高いものだったようです。
巨岩の上から眺める太平洋の眺めはまた格別です
山頂で神事を済ませると次は平田神社を目指して下山します。
下山の時は途中で少し寄り道をしました。北岳神社と平田神社の中間点にある中岳神社で神霊を休ませるためです。
ここは山から流れる清流沿いにあり、北岳神社と同じく巨岩のかたわらに建てられた祠で、ここでもまた神歌が歌われます。そこからは太鼓をたたき、そのリズムに合わせて「テコテンドン オー ソーライソーライホー」と連呼しながら下山します。
出発から7時間半ほどがたった午後3時半ごろ、ようやく平田神社に帰り着きました。到着すると、待機していた宮司の上薗久美子さんにヒモロギを手渡し、神歌を歌いながら神殿を左右3回ずつまわり、本殿祭へと移ります。
山から戻った一行を宮司が出迎えます
この本殿祭とは、神殿で神舞を奉納し、それにより神霊をなぐさめてからヒモロギの赤い産着をほどくというもので、その際、ヒモロギから神霊が離れ、また北岳神社へと戻っていくとされます。参加者は神殿の北岳方向の窓を開けて神霊を見送り、別れをつげて祭りを締めくくりました。
ちなみに、このテコテンドンは岸良地区以外からでも自由に参加できるそうです。体力的にはけっこうきつい行事ではありますが、せっかくですので、みなさんも参加してみてはいかがでしょうか。
きもつきの伝統行事に触れられるとともに、難行苦行の後の絶景にも出会えるのですから。もちろん、来年はきもつき情報局からも必ず参加しますよ!
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