梅雨の晴れ間が広がった2013年6月27日、平家の落人伝説でも知られる肝付町大浦の大浦交流研修センターで、肝付町社会福祉協議会が主催する町内二つの集落による交流座談会が行われました。
この日大浦集落を訪れたのは、大浦の北東に位置する一ツ松集落の住民15名です。午前8時半に一ツ松集落を出発して、湾岸道路をほぼ南下しながら、大浦には午前10時半前に到着すると、大浦集落から集まった12名の住民とともにともに昼食をつくったほか、昼食後の座談会ではお互いの抱える課題などについて話し合いました。
交流座談会の会場となった交流研修センターは元の大浦小中学校
実はこの二つの集落が交流したのにはわけがあります。鹿児島県内において高齢化率が第3位という肝付町にあって大浦集落は町内第1位、一ツ松集落は第3位という、高齢化率の非常に高い集落。「うちの先をゆく大浦の取り組みに学びたい」という一ツ松集落の依頼を受け、社会福祉協議会が二つの集落を結びつけ、実現することになったのです。
同会ではまず、二つの集落の振興会(町内会)会長によるあいさつがあり、大浦振興会の白坂義信会長が集落の現状について説明した後、一ツ松振興会の一松芳春会長からは、「今日は交流を通じて大浦から学ぶとともに楽しんで帰りたいです」と、今回の交流座談会への期待が表明されました。
歓迎のあいさつをする大浦振興会の白坂会長(左奥)
一通りあいさつが終わると、今度は二つの集落の参加者が複数のグループにわかれ、たけのこご飯とスパニッシュオムレツ、そしてわかめスープの三品をつくっていきました。普段は一人暮らしのお年寄りが多いということで、大勢の人といっしょに料理をつくっていくのは本当に楽しそうです。
スパニッシュオムレツに挑戦中
まきでたけのこご飯を炊いています
途中、まきで炊いたたけのこご飯がうまく炊き上がっていないなどのハプニングはありましたが、午後12時半すぎにはお待ちかねの昼食会が始まり、みんなで協力しながらつくったできたての料理を味わいました。
みんなで食べると食も会話もはずみます
昼食が終わったところで予定表には書かれていなかったパフォーマンスもありました。きもつき情報局を運営しているNPO法人きもつき情報化推進センターのアメリカ人職員、コディ・ガーナーが日本に来てから習ったという津軽三味線の演奏を披露したのです。
じょんがら節やハンヤ節の演奏が始まると、この日鹿児島大学から実習で見学に来ていた同大医学部保健学科の学生たちが踊り始め、それに二つの集落の住民も加わり、にぎやかな雰囲気が交流会場に満ちていきます。みなさん本当に楽しそうです。
アメリカ人が演奏する津軽三味線に大喜びの参加者
この日参加した大浦集落の住民のなかで最年長者、91歳の白坂チヅ子さんも「いつもは一人でいることが多いですから、こういうふうにして人の輪のなかに入っていって話をしたり、人の話を聞いたりするのは本当に楽しいです。一人で家にいるよりずっとましです」と語り、こうした交流会に参加するのが毎回待ち遠しいといいます。
さて、楽しい娯楽タイムが終わると今度は座談会です。冒頭、一ツ松振興会の一松会長から「今回は私たちが大浦の人たちから学ぶために来ていますので、一ツ松の人たちから大浦の人たちに向けて
質問をしていくことにしましょう」という発言があり、一ツ松の住民は「水道の維持管理はどうしているのか」「町道の草刈りはどうしているのか」などといった具体的な質問を投げかけました。
質問をしていくことにしましょう」という発言があり、一ツ松の住民は「水道の維持管理はどうしているのか」「町道の草刈りはどうしているのか」などといった具体的な質問を投げかけました。
それに対し、大浦の住民からは「ここには湧水の水源地が4か所あり、担当の班の人が交代で管理している」「(草刈りは)年2回ほど町に頼んでやってもらっている。年寄りが多く、草刈機を背負える人が少ないのでそうしないとやっていけない」などの回答がありました。
加えて、大浦では住民の数が減ってしまったために野生のサルやイノシシの害が発生するようになり、たけのこや果物の類はすぐに食べられてしまい、人間の口にはあまり入らない点やグラウンドゴルフは年1回しかなく、娯楽が少ない点などが指摘されました。
ただ、大浦では集落内の全戸にテレビ電話が設置されているため、お互いが顔を見ながら安否確認ができる利点があることなども指摘されました。座談会の途中では、社会福祉協議会のスタッフが会場に設置されているテレビ電話にスイッチを入れ、役場スタッフとつないで実際に会話を体験してもらう場面もありました。
テレビ電話を実際に体験する一ツ松の住民
今回初めて大浦を訪れたという一ツ松の中浜ヒデ子さんは、「ここに来るまではいったいどんなところだろうと思いましたが、自然が好きな私にとっては、とてもいいところです。今度は一人でもやってきて、何かのお手伝いができるといいですね」と、すっかり大浦を気に入った様子です。
また鹿児島大学から参加した同大医学部看護学科の学生は「限界集落と聞いて覚悟してきたのですが、予想に反して、80代、90代のお年寄りが元気なのに驚きました」と語り、辺境の地に生きる人々のパワーに圧倒されたようです。
最後は参加者同士で握手
バスが見えなくなるまで手を振って別れを惜しむ大浦からの参加者
こうして、さまざまな活動を通じてお互いを理解しあう交流座談会は予定通り、午後3時には終了。次回、大浦集落の人たちが一ツ松集落を訪れる約束をして別れたのでした。
※以下の地図でA地点が一ツ松、B地点が大浦となります。
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