【きもつき情報局】建長寺からの客人に心尽くしのおもてなし

朝方に強い雨が降った11月25日の昼過ぎ、1台の観光バスが肝付町後田の本城小学校跡に到着しました。
 
バスから降りてきたのは鎌倉の建長寺の関係者。平成21年から始まった道隆寺跡訪問も今年で5回目を迎え、今回は建長寺の職員を含む約20名が肝付町を訪れました。
 
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道隆寺跡での記念撮影
 
肝付町本城の道隆寺は、建長寺を開山した禅僧・蘭渓道隆が1246年に開いたといわれる寺ですが、明治初期の廃仏毀釈でほとんど破壊されてしまいました。その寺跡が土地の持ち主である福谷平(ふくたに たいら)さんらの手によって約30年かけて発掘、整備されたことから、次第に建長寺でも知られるようになり、訪問が始まりました。
 
今年5月には、福谷さんをはじめとする地元有志26名が建長寺を初めて訪問し、そのときのメンバーが中心となって今回の訪問団を出迎えました。
 
歓迎のあいさつに続いて、かつて大隅地域を治めていた肝付氏の城があった高山地区が発祥の地とされる薬丸野太刀自顕流保存会の会員らによる「続け打ち」や「抜き」などの演武が披露され、気迫のこもる演武に集まった人々から盛んな拍手が送られました。
 
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薬丸野太刀自顕流保存会メンバーによる演武
 
続いて、一行は道隆寺跡へ歩いて移動し、道路脇に立つ看板の前では福谷さんが同寺について解説、鹿児島では廃仏毀釈で道隆寺を含む多くの寺が徹底して破壊されたため、道隆寺の位置も以前はほとんどわかっていなかったが、発掘を進めていくなかで次第に明らかになってきたことなどを説明しました。
 
その後、観音堂跡地に入った一行は、敷地内の案内板で三国名勝図会に描かれたかつての道隆寺の様子などを確かめたほか、発掘されたおびただしい数の石塔群に関する福谷さんの説明に耳を傾けました。
 
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説明板でかつての寺の様子を確かめる一行
ひととおりの説明を受けてから、吉田管長らによる読経が敷地内に建てられた観音像の前で始まり、それに合わせて建長寺の関係者ならびに地元の人たちが次々と献香していきました。
 
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観音像の前での読経
 
読経が終わると再び逆修供養塔などについて福谷さんの説明を受けながら敷地内を散策、最後に記念撮影をしてから再び本城小学校跡へと引き返し、本城集落センターで昼食会となりました。
 
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昼食の支度に大忙しの女性グループ
 
昼食は今年5月の建長寺訪問に加わった地元のメンバーを中心とする女性グループが、前日から準備した心づくしの手料理です。鶏だしを使った手打ちそばやガネ(サツマイモなどを使ったかき揚げ)、煮物などの郷土料理がふるまわれる一方、合間には地元有志による詩吟の詠唱などの余興もあり、訪問団のメンバーは地元の人たちによる心のこもった歓待を存分に楽しんでいる様子でした。
 
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手料理を楽しむ訪問団メンバー
 
そのほか、互いに手土産を贈りあう場面もあり、訪問団には地域の住民の協力を得てつくられた、やぶさめと来年の干支にちなんだ馬のわら細工に加えて、お菓子や手づくりの小物などが一人ひとりに贈られました。</f ont>
 
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特製のわら細工を受け取る吉田管長
 
今回の訪問団に加わった静岡にある寺の僧侶で、現在、建長寺に勤めている池田伸一さんは「道隆寺のことを知った数年前から、一度お参りに行きたいと思っていました。寺跡というので、もっと質素なところかと思っていましたが、みなさんの尽力できれいに整備されていてびっくりしました。ありがたいことです。開山様(蘭渓道隆)がここから来られたかと思うと感慨深いです」と両寺の歴史的なつながりに感じ入っている様子でした。
 
また、建長寺で長年働いているという青島栄子さんは「埋まっていたものを掘り起こす苦労もすごいと思いますが、それを広めて、大事に残していこうとする、この土地の方々の努力もすばらしいです。さまざまなことがきっかけになって、今のように交流するようになったことに運命的なものを感じます。本当に来てよかったです。こうして歓迎してくれる地元の方々の気持ちもうれしいです」と語り、地域住民との触れ合いを楽しんだようです。
 
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吉田管長とのお別れのあいさつ
 
昼食会後は総出でお見送りです。「またぜひいらしてください」とあちらこちらであいさつをかわしながら、バスに乗り込んだ建長寺一行をみなで手を振って見送りました。
 
今回の訪問団受け入れの中心となった福谷さんは「5月に建長寺に行ってたいへんなおもてなしを受けましたので、そのお返しができたらと思って、心を込めてお迎えしました。みなさんに喜んでもらえたようで、とてもよかったです」と語り、訪問団の受け入れが無事に終わったことに安堵の表情を浮かべていました。
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