【きもつき情報局】看取りをさまざまな角度から考える

福祉や医療関係者の視点から最期の看取りを考える、地域ケアを支える仲間たちの集いが3月11日、廃校が決まった有明小学校の体育館で開催され、地元住民や医療関係者など約100人が参加してパネルディスカッションや写真家の國森康弘氏の講演などを聞き、地域で支える看取りを共に学びました。
 
講演の前に行われたパネルディスカッションでは、肝付町地域包括支援センター看護師の吉留明美さんと、ルミコ医療ステーションの上園瑠美子院長がパネラーを担当し、自宅での実際の看取り体験を発表。ある高齢の夫婦の例をあげ、要介護者の夫の面倒をみていた妻が先立ってしまい、要介護者である夫が逆に妻を看取る側になった例を紹介しました。
 

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パネラーを務めた吉留さんと上園院長(右から)
 
地域をはじめ、さまざまな機関の協力があって、自宅で最期を迎えられたことを、体験者の吉留さんが「看取る側が要介護者だからできないというのは偏見だと思いました。この体験を通して多くを学びました」と涙を流しながら語り、上園院長は「この時の奥さんの覚悟が印象に残っています。吉留さんの話を聞いて、みんなの支があったからこそできたのだと、あらためて感じました」と話を締めくくりました。
 

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講演の前に行われたパネルディスカッション
 
パネルディスカッションの後に行われた講演会では、講師を担当した写真家の國森康弘さんが看取り、在宅医療、地域包括ケアの現場を密着して撮影した写真をスライドショーで紹介しながら、その写真の説明を補足しながら進めました。
 
神戸新聞社勤務を経てイラク戦争を機に独立した國森さんは、紛争地や経済貧困地域を回り、国内では戦争体験や野宿労働者、東日本大震災被災者たちの取材を重ねてきたフォトジャーナリストです。
 

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スライドショーで看取りを紹介する國森さん
 
スライドショーでは、被災地での地域包括ケアの写真が中心で、津波によって建物だけではなく、地域の繋がりが流されたこと、そのようななかでも医師が中心になって訪問診療に力を入れ、折り紙教室や演奏会など医療とはかけ離れた分野での活動も行ってきたことなどが紹介されました。
 
また、最期の看取りの現場もカメラにおさめていて、特に僻地とよばれるような若者がいなくなった限界集落での看取り、死の直前に大好きだった遊園地への旅行に行けた女の子の写真を中心にスクリーンに映し出しました。そこでも医師やヘルパー、看護師、学生ボランティア、地域の協力があったことが強調されました。
 

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國森さんの作品のひとつ
 
國森氏は「自分がこういった取材をする前までは、老いや死に対して悲観的な先入観があったのですが、取材をとおしてそうではないなという思いになりました。むしろ人は歳を重ねるほど、旅立ちが近いほど、内に蓄えている生き抜く力、命のほとばしりみたいなものはどんどん高まっていくのではないか、そんなことを思うようになりました」と、取材をとおしておこった心境の変化について話しました。
 
内之浦から参加した福祉関係の女性は「涙なしに見られなかったです。命の大切さをあらためて考えさせられました」と感想を述べました。
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