肝付町の四十九所神社に伝わる流鏑馬は900年にわたる歴史を持つ伝統行事です。
毎年、中学2年生の男の子が射手を務めることが特徴のひとつであり、今年は高山中学校2年生の川野雅くんが射手に選ばれ、9月から練習を続けてきました(関連記事はこちら)。
今年、流鏑馬が行われたのは10月19日、四十九所神社の例大祭の日です。
当日は朝早くから高山流鏑馬保存会のメンバーや高山高校のボランティアたちが、注連縄に垂(しで)をつけるなど馬場の最終準備を進めました。
二晩にわたる潔斎を終えた射手が装束をつけて、人前に現れるのは午前10時。武者行列(流鏑馬パレード)で町内を練り歩き、町民へのお披露目をします。
パレードが終わると、四十九所神社で神事・弓受けの儀が始まります。弓を受け取った瞬間、「少年は神になる」といわれています。
その後、午後2時からいよいよ流鏑馬です。
高山の流鏑馬は、馬場を歩く「馬場ならし」、矢を射ずに走る「空走り」、「第一走」、「第二走」、「第三走目」と進みます。3回の走りで、それぞれ3つの的に向かって矢を射ます。矢の数は合計9本で、第一走の一番的には「白羽の矢」を射ます。
鳥居前の馬回しをまわり終えて「空走り」に向かうそのとき、異変が起きました。神馬が馬引きを振り切るようにして駆け出したのです。
大勢の観客に興奮していたのでしょうか、神馬は馬場を駆け抜ける途中で、急に向きを変えて民家の庭へと入り、射手を振り落としてしまいました。
家族や観客が心配そうに見守るなか、保存会のメンバーが話し合い、本人の希望もあって、続行が決まりました。落馬してもなお続けようという射手の精神力は大したものです。
破けてしまった装束をあらためて再び登場した射手を観客は温かい拍手で迎えました。
射手は何事もなかったかのように毅然と第一走に挑みます。
しかし、第二走で再び神馬が急転回し、射手を溝に振り落としてしまいました。今度もまた射手は続行を望んでいたようですが、大事をとって救急車が呼ばれ、検査を受けることになりました(幸いなことに検査結果に異常はなく、打撲ですんだということでした)。これまで懸命に練習に励んできただけに、中断するのは悔しかったことでしょう。
その射手の思いを引き継いで、第三走で代わりを務めたのが後射手(昨年の射手)の吉松大志くんです。
伝統として、後射手は何かあった際には神事である流鏑馬を続行するべく射手の代役を務めることになっています。
後射手は見事に的を射抜き、代役を果たしました。
指宿市から初めて流鏑馬を見に訪れたという女性は「一度落馬しても続ける射手も、また、落馬を目のあたりにしながらも恐れることなく代役を務めた後射手も素晴らしいです。感動しました。また来年も見に来たいです」と語り、流鏑馬に挑む少年たちの果敢な姿に惜しみない称賛を送っていました。
この記事へのコメントはありません。