【きもつき情報局】テコテンドン体験レポート!(2015年)

岸良の平田神社には、毎年正月2日に北岳の山頂に神様をお迎えに行くテコテンドンという神事が伝わっています。
 
かなり険しい山道を7~8時間かけて登って帰って来るもので、山登りが神事となっていることは珍しいそうです。800年以上の歴史を持つといわれ、かつては地区の子供も参加して行われていました。近年でも多いときは60名ほどの参加があったそうですが、戦前はもっと大きな祭りとして行われていたといいます。
 
今年は元日に降った雪が残る中、午前8時過ぎに男女11名で平田神社を出発することになりました。うち2名はきもつき情報局のスタッフです。
(動画バージョンです)
舗装された道路を5分ほど歩くとすぐに未舗装路になり、その未舗装路脇から北岳へと続く山道に入ります。はじめのうちは道もはっきりとして、眺めもよかったものの、どんどんと道は険しくなっていきます。案内人がいないとどこを進めばよいのか分からない道なき道で、川を岩づたいに渡り、倒木を乗り越えながら進んでいくのです。防寒をしっかりとしてきたため、汗が体中から流れてきます。
 

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 苔むした石を足場に川を渡る参加者
 
途中、第一展望所の岩の上からは、美しい眺めが広がり、疲れを癒すことが出来ました。所々に残る雪に心躍らしていたのですが、気がつくと雪は深くなり、3~5cm位積もり、寒さも身にしみてきました。
 
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途中の展望所で景色を楽しむ参加者
 

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展望所からの眺め
 

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雪山を上る参加者
 
休憩を挟みながら、4時間かけて山頂に着きました。目の前に大きな巨石があって、その下に神棚くらいの小さな祠があります。
 
横殴りに雪が降りはじめ、顔や頭が白くなって寒さに震えながら、神事の準備をし、火をおこしました。
 

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 祠の真上にある巨石
 
余談ですが、このとき、汗で下着が濡れていたため吹雪の中で着替えるはめになりました。事前に登山経験豊富な女性から山を登るときは薄着で、と注意された理由がよくわかりました。本来は薄着で登り、汗をかかないようにして、頂上について休憩する中で寒くなってくる時に服を着ていくのだそうです。
 
ご神体とされる11個の石の前で平田神社の宮司のお兄さん、上薗輝典さんが祝詞を唱え、ヒモロギ(常緑樹のサカキの束に赤い産着を着せて人の形をかたどったもの)に神霊を移します。この神事と同時進行で先ほど起こした火で餅を焼きます。慣例の一つのようで、一行の昼食になります。
 

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祝詞を唱える上薗さん
 

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 起こした火で焼かれた餅
 
その後、雪が吹雪いて、寒く体が動かない中、巨石にどうにかこうにかよじ登りました。本来ならそこから見渡す岸良地区の絶景を楽しむことになるのですが、悪天候のため雲に覆われてしまっています。残念ですが、仕方ありません。また、登るのはどうにかなったのですが、正直、降りるのはかなり怖かったです。貴重なロッククライミング経験となりました。</font >
 
 

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巨石の上で記念撮影
 
山頂での神事が済むと、平田神社を目指して下山します。登ってくるときの下から見える勾配と降りるときの上から見る勾配はまったく違って見えます。
 
登りと下りの光景が違うためか何度か道を間違えながら、本当にここを登ってきたのかと思うくらいの急な勾配を足元に気をつけながら、そして、時々滑りながら、降りていきました。
 
途中の中岳神社で神霊を休ませるため、本来なら川沿いにある中岳神社へ川を渡って行き、 祠の前で神事をするのですが、雪のためか石や岩が滑りやすくなっていて、川を渡れなかったので川岸で行いました
 

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中岳神社の方を向いて神事を行う一行
 
そして、そこからは太鼓をたたき、そのリズムに合わせて「テコテンドン オー ソーライソーライホー」と連呼しながら下山します。
 

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 ヒモロギを先頭に平田神社に向かう一行
 
出発から8時間半ほどが経った午後4時半ごろ、ようやく平田神社に帰り着きました。待っていた宮司にヒモロギを手渡し、神歌を歌いながら本殿のまわりをまわります。本来ならば左右3回ずつまわるのですが、この日は雪山を上ってきたばかりの登山者に配慮して左まわりのみで行われ本殿へと入りました。
  
本殿でこの神霊をなぐさめてから、神歌を歌いながらヒモロギの赤い産着をほどきます。北岳方向の窓を開けてみんなで神霊を見送り、別れをつげました。
 

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頭をさげて神霊を見送る関係者
 
このテコテンドン、参加はだれでも自由にできます。今回の参加者のなかには60歳から20年間参加している男性もいれば、県外から初めて参加された女性もいました。
 
きもつきの伝統行事に触れられるとともに、難行苦行の後に天気が良ければ、絶景にも出会えるのです。大隅の南の地区でこのような神事が行われているのは、神秘的な感じがします。
 
今回は十数年ぶりという雪の当たり年で、景色こそ楽しめませんでしたが、南国の山で雪山登山というのは貴重な体験となりました。
 
ぜひ、みなさんも来年は参加してみてください。
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