自転車愛好家であれば一度はチャレンジしてみたいと思わせるサイクル・ツーリング。エコロジー志向の広がりもあって、今注目を集めている旅行スタイルのひとつになっています。それを物語るようにテレビでは現在、タレントによる日本縦断をテーマにした番組が放送されているほどです。
そんなサイクル・ツーリングに齢78歳にして初チャレンジした方が今回のわれらきもつき人の主人公、東幸男さんです。
78歳にしてサイクル・ツーリングに初挑戦した東さん
もともと旅行が趣味だと話してくれた東さん。これまでは自家用車や公共の交通機関を利用して各地を巡っていました。日常生活とは一味ちがった雰囲気に十分満足していたのですが、ある時、甥の福永勝さんが自転車で四国一周するという話を耳にし、自転車での旅に関心を持つようになったそうです。
「今度は自分の力だけで旅をしたい」。その気持ちは日増しに強くなるばかり、とうとう東さんは福永さんに同行することを決めました。東さんの姉の息子にあたる福永さんは、これまでに北海道など各地を自転車で旅してきた経験者です。その福永さんからサイクル・ツーリングに必要なものを教えてもらい、ドリンクホルダーや寝袋など出発の準備を整えました。
愛車に取り付けられたドリンクホルダー
一方、はじめは家族の反対もあったそうです。奥さんのトシ子さんは「年をとっているから心配でした。何かあったときにまわりに迷惑をかけるのではないかと思いました。でも、主人は一度決めたことは絶対に曲げない人です。最後は何かあったらすぐに迎えに行こうと腹をくくり、送り出しました」。
出発は2014年10月1日、旅の相棒となる自転車は、サイクル・ツーリングで一般的に利用されるロードバイクやランドナーなどの専用車ではなく、通学・通勤などでよく使われるシティサイクルです。通称ママチャリと呼ばれる相棒にまたがり、我が家を後にしました。
東さんと長旅を共にしたシティサイクルと
道中は自転車の故障もなく天候にも恵まれ、大分県からのフェリー輪行以外はすべて自転車で走り抜きました。寝袋での野宿や香川県で食べた讃岐うどん、海岸線の美しい景色など、すべてが大切な思い出になったそうです。
その中でも特に印象に残っている出来事が、地元の人たちとの交流だったと話します。
「旅先で出会った人たちがみんな気さくに話しかけくれました。また、さっき話しをしたばかりの人が後から追いかけてきて、リンゴやバナナなど差し入れをしてくれたこともありました。通常の旅では味わえない人の温かみ、優しさを感じられることもサイクル・ツーリングの魅力のひとつですね」
全行程を21日ほどで走破し、10月21日に帰宅した東さん一行は、日に70キロメートル平均で進んだといいます。道中、きついと感じたことは一度もなかったそうです。それもそのはず足腰の強さには自信があって50代の頃にフルマラソンを完走した経験を持っているというから納得です。
「今でも若い者には体力で負ける気はしない」という東さんにその元気の秘訣を聞いてみたところ「たくさん水を飲むことです」とすぐに答えが返ってきました。
そんな東さん、次は名古屋までのサイクル・ツーリングを計画しているそうです。このチャレンジ精神こそが本当の元気の秘訣なのかもしれません。
この記事へのコメントはありません。