今年4月に着任した肝付町の地域おこし協力隊のひとり、加藤美和子さん。
加藤さんは福井県出身。肝付町に引っ越すまでは祖母のいる宮崎市で5年間暮らしていました。
子どものころから宇宙が好きで、宮崎市からたびたび内之浦宇宙空間観測所のある肝付町を訪れていたそうです。
地域おこし協力隊に応募したのも「宇宙のまち・肝付町」で働きたいという思いからでした。
取材に応じる加藤さん
そんな宇宙好きの加藤さんにまず任されたのは「きもつき宇宙協議会」の事務局の仕事です。
この協議会は「宇宙科学」関連資源を活用し、「宇宙のまち・肝付町」を全国に発信、町のファンを増やすことを目的に2016年4月に発足したばかりの組織。
「宇宙資源を通し、イベント等の企画をして肝付町のPRをしたい」と考えている加藤さんと目指すところはほぼ同じです。
着任して間もなくイプシロンロケット2号機が肝付町の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられることが決まりました。
「それからが怒涛の日々でした」と加藤さんは振り返ります。
ドリームアートプロジェクト(H-ⅡAロケットに投稿画像によるモザイクアートをペイントする企画)と同じように、イプシロン2号機でもなにかできるのではないかと考え、内之浦宇宙観測所の職員に突撃で相談したことをきっかけに、メッセージを募集してデザインの一部として機体に掲載する「イプシロンで夢を射とめよう!」を企画したのが5月。
企画案が通り、8月にメッセージ募集を開始、約1ヶ月の応募期間で目標の5000件を超える6671件を受け付けました。
機体に貼られるシールを確認する加藤さん(写真提供:加藤さん)
流鏑馬の矢をイメージしたデザイン(写真提供:加藤さん)
「企画をするにはぎりぎりのタイミングだったのですが、なんとか間に合いました。メッセージの締切日が『宇宙の日』だったことも、その日、機体(イプシロンロケット2号機の1段モータ)が到着したことも、縁のようなものを感じてうれしかったです」
ちなみに最初の案はペンシルロケットにちなんで、鉛筆を模してフェアリング部分(ロケットの最先端部)に色をつけるものだったのですが、機体温度が上昇してしまうなどの問題があるため、企画書を再提出することになったそうです。
募集終了後も、ロケットファンの集まるパーティーを開催したり、打ち上げに備えて限定グッズをつくったりと協議会事務局としての活動が続いています。
宮原見学場などで販売予定のグッズ(一部)
「打ち上げはうれしいのですが、その後が本番。同じロケット打ち上げ場のある種子島に比べると肝付町の知名度は低いと感じますし、また、内之浦=ロケットの町としてのイメージはあっても、合併して10年経っていますが、『肝付町』としてはまだ定着していないようです」と話す加藤さん。これから地域おこし協力隊としても、宇宙協議会としても土台づくりをしていかなくてはなりません。
「宇宙に一番近いまちは、宇宙技術の最先端の、挑戦的なロケットが打ち上げられている肝付町だと思っています。なにより、基地と町民の距離感が近いです。これは地域のみなさんがそうした関係を築いてきたからこそ。今後もこの関係を保つために、若い世代も盛り上げていきたいです」
この記事へのコメントはありません。