昨年12月、イプシロン2号機にのって打ち上げられたジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG)。
ジオスペース探査衛星「あらせ」(ERG)の模型
この「あらせ」という愛称の由来は、下記の通りです(JAXAプレスリリースより転載)。
1. 地球周辺の宇宙空間であるジオスペースの中で最も荒々しい高エネルギー粒子に満ちたヴァン・アレン帯という宇宙の「荒瀬」(水が激しく波立ちながら流れている川のこと)に漕ぎ出していくことから。
2. 内之浦宇宙空間観測所の所在地である鹿児島県肝属郡肝付町に流れる「荒瀬川」にちなんで。荒瀬川には鳥の美しい歌声に関わる伝説があることから、「コーラス」(※)を観測する本衛星にふさわしい。
※宇宙空間に自然に存在する電波の一種。周波数が数kHzの可聴帯の電磁波で、音声に変換すると、 “小鳥のさえずり”のように聞こえる。
こうした由来に、「なるほど」と思う一方で、2にある「荒瀬川の伝説とはどんな伝説だろう?」と思われた方もいるのではないでしょうか。
まず、この荒瀬川は、国見山系から波見地区を流れ、肝属川河口近くに注ぎ込む川のひとつです。荒瀬川には轟(とどろ)の滝という名の滝があり、夏場に人気の水遊び場所となっています。ちなみに全国的にも有名な妖怪「一反もめん」はこの轟の滝周辺や池之園という地域などで出没していたといわれています。
波見地区にある轟の滝
「あらせ」の命名のもとになった、「鳥に関する伝説」は、「高山郷土誌」(p980参照)に掲載されています。
伝説の内容は、次のようなものです。
轟の滝の上流に「蛇の穴」と呼ばれる甌穴がありました。ある猟師が射た鳥がこの穴の中に吸い込まれ、それを追った犬もまた穴の中に吸い込まれてしまいました。
それ以来、その穴の中から鳥の鳴き声が聞こえてくるようになり、この鳥の美しい鳴き声を小さい頃から聞いているので、波見の人の声は美しくなったといわれるようになった、ということです。
ちなみに、犬は数日後に志布志湾に出て来て、その場所を「犬返(いんげ)し」というようになったそうです。
こうした言い伝えと最新技術が繋がっているというのは、面白いですね。
探査衛星「あらせ」にも、伝説に残るような成果をおさめてもらいたいものです。
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