肝付町移住促進支援事業で滞在型の宿泊施設兼地域住民のコミュニティースペースに改修された空き家「きしらの家」。
地域の人々のための健康相談所である「暮らしの保健室」が開設されたり、イベント会場となったりして、地域の人々の憩いの場所のひとつとなっている。
その「きしらの家」で、6月3日、ある交流会が開かれた。
コーディネートしたのは、岸良を中心に活動している、肝付町地域おこし協力隊の田中綾音さん。メインゲストは、神奈川県逗子市在住の日髙夫妻だ。
交流会であいさつする日髙夫妻
夫の仁さんは、「きしらの家」の改修を手がけた(関連記事はこちら)。妻の直穂子さんは、その改修がきっかけで、手にすることになった辺塚ダイダイをマーマレードに加工して世界へ送り出した――具体的にいうと、イギリスで開かれたマーマレード・コンテスト「The World’s Original Marmalade Awards2017」の職人部門に出品し、見事、金賞を受賞した。
今回は、そのマーマレードの試食会を兼ねた交流会となった。
試食の準備
直穂子さんは逗子市でカフェを営んでいる。
3年前、仁さんが岸良から辺塚ダイダイを持ち帰り、直穂子さんそれを使って、ジュースやケーキ、マーマレードなどをつくった。
「自分も食べ物で地域のお手伝いをしたいと思っていたので、メニューに加えることにしたのです」
マーマレードについて説明する直穂子さん
なかでも人気が高かったのが、「レモンやグレープフルーツとは違う、初めての味」である辺塚ダイダイのマーマレードだった。
辺塚ダイダイは通常、果皮が緑色の、未完熟のうちに収穫されるが、マーマレードには、ほとんど市場に出回ることのない完熟したものを使用した。
受賞したマーマレード
刻む皮の厚さや、果汁と皮の比率、煮る時間、砂糖の種類や量を少しずつ変え、毎年改良を加え、納得のいく味となった今年、ぜひ「本場」の人にも食べてもらおうとコンテストへ応募することを決めた。
「賞をとるつもりで、思い切っていつもの4倍、辺塚ダイダイを送ってもらいました」
いつもは50個のところを200個使ってつくったマーマレードは約200本。新聞に取り上げられ、受賞が知れ渡ると、朝から電話が鳴り続け、来店者のみへの販売だったが、すぐに完売したという。
毎年、家で実った辺塚ダイダイを送り、夫婦で交流を深めている石川京子さんは「想像もつかなかったこと。受賞してすぐに電話をもらって、とてもうれしかったです」と受賞を我がことのように喜んだ。
説明を聞きながら試食する参加者
現在、加工は直穂子さんがほぼ一人でしているが、今後、人を増やし、増産をしたいと考えている。
交流会の開始前には、辺塚ダイダイの生産・加工を手がけている地元のNPOと話し合いの場を設け、辺塚ダイダイを確保する手配をした。
陸の宝島・岸良メンバーとの打ち合わせ
「これからも、改良はするかもしれません。改良のために、いろいろと試すのは苦ではないです。なにより、食べた方に『おいしい』といってもらえることが励みになります」と直穂子さんは話す。
今回、辺塚ダイダイの出荷を決めたNPO法人陸の宝島・岸良の理事たちは「地域のひとたちに自信をもって、故郷に誇りをもってもらいたい。いいものがある、と自覚するきっかになれば」と期待を寄せている。
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