照葉樹の原生林や天然の滝など豊かな自然とともに人々が生活を営む肝付町後田の通称・川上地区。その地域を流れる高山川で9月末、1メートル60センチ、胴回り約40センチにもなる巨大うなぎが捕獲された。
暴れる大うなぎ
その名も「はしたうなぎ」。鹿児島弁で柱のことをはしたという。柱のように胴回りが太いことから、この辺りの地域ではそう呼ばれている。
捕獲したのは川上地区岩屋集落の吉直幸雄さん(75)。近くの物産館で販売される山太郎ガニ獲りの名人だ。はしたうなぎは、その仕掛けにかかっていたという。
捕えた大うなぎと一緒に
いつものように仕掛けを引き上げに出かけた吉直さん。水深3、40センチのところに仕掛けたカニカゴを見下ろし「誰かがいたずらをした」と思ったという。
50センチ四方のカニカゴに丸く収まったはしたうなぎを廃タイヤと勘違いしたせいだ。徐々に引き上げていくとタイヤと思っていた黒い塊がどうやら生き物のようだと認識。さらに引き上げていく。籠の中には山太郎ガニ20匹と重さ9.5キロの大うなぎが入っていた。
「小さい頃、1メートルほどの大ウナギは何度か捕まえたことがあるが、こんなに大きなウナギは初めてです。これこそ、はしたうなぎ。おそらく山太郎ガニを追って籠に入ったのではないでしょうか」と当時の様子を興奮気味に話す。
作業の手を休め当時の様子を話す吉直さん
さっそく自宅に持ち帰り、人工の池に放した。「食べるつもりはありませんでした。小さい頃に大うなぎを食べたことがありますからね。これが美味しくないのです」
家族や地域の人に見てもらうためにしばらくの間、池で育てていた。池の水は近くを流れる岩屋川の絞り水を引いたもの。水質は万全だ。ところが大うなぎには人工池が狭すぎたのだろうか、脱走騒ぎもあった。
吉直さん宅の人工池
その時は、すぐに見つかり事なきを得たものの、その後台風が襲来。大雨に見舞われ、自宅前の道路が川のようになったとき再度脱走を図り、雨水の流れにのって岩屋川へと続く側溝に逃げたのだとか。
「今になって思い返してみると、大うなぎは大雨を予兆していのではないでしょうか。実際しばらくしてから台風がきましたからね。1回目の脱走は予行練習のつもりだったのでしょう」
この川のどこかに今も(岩屋川)
大うなぎが吉直さん宅の池にいたのは1カ月ちょっと。そこにいた証の写真は額に入れ居間に飾ってある。写真を眺めながら「今もこの地域のどこかに生息しているはずです。川の主、地域の守り神として元気でいてもらうことが一番です」と少し寂しそうに話した。
【吉直幸雄さん】
かつては採石場に勤務していた。働きながらも趣味の山太郎ガニ獲りを続け、今では近くの物産館「やまびこ館」に卸している。他にもしいたけやひらたけ、こんにゃく芋なども栽培。元気の秘訣は毎日の晩酌。
この記事へのコメントはありません。