【きもつき情報局】仲秋の本町八月踊り(2018年)

かつて肝付町高山地区の商業の中心地だった「本町(ほんまち)」。三間間口といわれる、幅が狭く奥行きの深い町家が通りに並んでいた昔の面影を残す地区だ。
 
そこで旧暦の8月に行われているのが「本町八月踊り」。櫓の上で唄と太鼓、三味線、胡弓が演奏され、笠をつけた踊り手たちがその周囲で輪になって踊るものだ。1962年に県無形民俗文化財の指定を受けた。
 
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(2018年の本町八月踊りの様子。動画はこちら
八月踊りは水神祭に由来するといわれ、五穀豊穣・無病息災を祈って、かつては肝属川や高山川の流域で集落ごとに行われてきたが、現在でも続いている地域は少なくなった。
 
本町では保存会を立ち上げ、この伝統を守っている。かつては旧暦の8月18日に毎年行ってきたが、現在では、2年に1回を表年として、水神祭の神事と直会、鉦踊りを奉納する法楽(ふらく)、八月踊りまでを行っている。
 
今年(2018年)は表年にあたり、9月22日に開催された。
 
本番に向けて、9月のはじめから自主練習が、その後、本番と同じ8曲通しでの練習が休みをはさんで約2週間、行われた。
 
通しでの練習会場は集会所の裏。本番と同様に奏者たちを中心に周囲で輪になって踊る。
 
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(集会所裏での練習風景)
 
「八月踊りについて聞くなら」と松元幸四郎保存会会長に紹介されたのは、原田健一さん。
 
原田さんは中学1年生のときに入った青年団で鍛えられたおかげで、唄も太鼓も踊りもできるが、今は太鼓を担当している。
 
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(太鼓を打つ原田さん[左]と猿渡さん)
 
「言っていること、覚えていることが、人によってどうしても違ってくるので、つくりました」と八月踊りの由来やしきたり、歌詞などをまとめた冊子を見せてくれた。
 
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(保存会で制作した冊子)
 
唄を担当するのは喜寿を迎えた林 正途さん。23、4歳のころ、先輩から「こっちでやってみろ」といわれて声を出し始めたのが、きっかけとなって唄を担当するようになった。
 
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(通しでうたい続ける林さん)
 
「気をつけるのは、のど。息を継ぐ間もないから、つらいんですよ」
 
元の音はもっと高く、調整していくらか下げたものの、まだ男性には高いので、のどをいためないように注意しているそうだ。
 
原田さんとともに太鼓を担当するのは猿渡正信さん。自作した譜面を見ながら太鼓を打つ。太鼓を始めて8年になるが、唄の後継者としても期待されている。
 
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(猿渡さん自作の譜面)
 
「八月踊りの唄は、聞いての通り、(男には)音が高くて難しい。けれど、存続していくためにもいずれはしないといけないと覚悟を決めています」と話す。
 
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(三味線も胡弓も奏者は本町出身!「三味線をしてくれる人がほかにいれば、
踊りたいですね」とのこと)
 
踊り手は「おじいちゃん、おばあちゃんに見てもらいたい」という小学生、「おとなになって町を離れても八月踊りには戻ってきて踊りたい」という中学生、「上手い人をまねるだけです」と今年初めて挑戦する青年、「子どものときから踊っている」という年配者とさまざまだ。
 
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(休憩時間には、裏方で支える女性たちが準備したお茶やお菓子を振る舞う)
 
踊りを手取り足取り教えるようなことはなく、みな見よう見まねで覚える。「先輩」を見ながら踊り、休憩時間に動きを確認し、教えてもらう。動きは曲ごとに違うが、踊り手たちは「毎回通しで練習するので、なんとなく覚えられますよ」という。
 
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(休憩中に振りを確認)
 
地域の人々の協力のもと、練習を重ねて迎えた本番。
 
集会所で神事を行った後に、18時頃から法楽が始まった。太鼓と鉦を打ち鳴らしながら歩いて移動し、本町の東側の八坂神社と西側の水神祠の前で、その後、集会所の裏の水神祠の前で鉦踊りを奉納する。
 
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(太鼓と鉦を打ち鳴らしながら移動。本町出身者は「この音を聞くと
八月踊りが始まるなと感じる」と話す)
 
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(五色の紙で飾られた水神祠の前で鉦踊り)
 
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(集会所裏の水神祠の前でも鉦踊り)
 

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(踊りでかぶる菅の笠。前が見えにくいとのことで、かぶり方も先輩から習う)
 
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(日暮れ後の本町の通り)
 
「本町八月踊り」の開始は19時半。「出端」の音楽に合わせながら、踊り手が輪をつくった後、「五尺」「一ッとの」「お久米句読」「思案橋」の4曲を、休憩を挟んで「万次郎句読」「おはら万女」「平佐句読」「船頭衆」の4曲を踊る。休憩後は、誰でも踊りの輪に加わってもよいこととなっていて、見よう見まねで踊る人たちの姿も見られた。
 
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(伝統にのっとった裾模様の着物)
 
 

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(観客との距離が近いのも魅力のひとつ)
 

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(集まった大勢の観客。家族連れも多い)
 
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(見よう見まねで踊る人も)
踊りが終わった後、「多くの人が見に来てくれてよかった」と話す原田さん。学生が本町八月踊りを題材に、論文を書くために通っていることを嬉しそうに教えてくれた。
 
次は2年後。若い人たちへと継承されていくことを願っていた。
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