【きもつき情報局】辺塚だいだいカンパチ②~高山漁協でブランド化

鹿児島県はカンパチの養殖が盛んで、全国一の生産量を誇ります。
 
肝付町波見の硯石(すずれいし)港にある高山漁業協同組合でも、カンパチの養殖を行っています。
 
香りのよい柑橘類「辺塚だいだい」を食べて育った「辺塚だいだいカンパチ」で、2017年12月には、鹿児島県指定のブランド「かごしまのさかな」(※)に認定されました。
 
「辺塚だいだい」は、肝付町と南大隅町にある辺塚地区周辺に自生していた香酸柑橘類の固有種。2017年12月15日には地理的表示(GI)保護制度にも登録され、肝付町の特産品となっています。
 
※かごしまのさかなづくり推進協議会が県内生産者のモデルとなるような優れた養殖ブリ・カンパチを審査・認定する。
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(出荷作業中の辺塚だいだいカンパチ)
 
肝付町でとれたものを食べ、肝付町の海で育った、まさに肝付町の魚といえる「辺塚だいだいカンパチ」の特徴は、身の透明感に血合いの鮮やかさ。そして弾力のある歯ごたえのよさに加えて魚臭さがないこと。さらに、調理方法などにもよりますが、辺塚だいだいに由来する爽やかな柑橘系の香りがすることです。
 

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(辺塚だいだいカンパチの刺身盛り合わせ[提供写真]
 
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(辺塚だいだいカンパチのロゴマーク。作成には地域おこし協力隊の田中綾音さんが協力)
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(隣の鹿屋市のスーパーでの店頭販売にもロゴマークがつく)
この「辺塚だいだいカンパチ」を生み出した高山漁協は、肝属川河口付近から飯ケ谷のあたりまでを漁場としています(下記地図参照)。この海域は、沖合を黒潮が流れる外海に面しており、潮の流れがよいため赤潮の発生がありません。温暖で適度な潮流に加え、海水に溶け込んでいる酸素量も豊富で、養殖場として好条件がそろっています。
 
高山漁協における水揚げ金額は7割近くが養殖で、約3割が定置網となっています。ちなみに、水揚げ量はこの反対、約3割が養殖で、約7割が定置網です。
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(志布志湾にある辺塚だいだいカンパチのいけす)
 
かつてはブリやヒラスの養殖も行っていましたが、現在はカンパチに一本化。「地元にしかないものを」「付加価値をつけ消費者に求められるものを」と考え、およそ10年前から養殖魚のブランド化に取り組みました。
 
「柑橘類を与えると臭みが取れるという情報があって、いろいろと勉強しました」と谷山久男組合長。
 
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(漁船を操る谷山組合長)
 
肝付町が柑橘類の産地であったため、はじめは県外産ではありましたが乾燥させた柑橘類の皮を配合飼料に混ぜて与えることから試みました。柑橘類を混ぜたえさを与えていた間、特徴として打ち出すには弱かったものの、魚臭さが抑えられて食べやすくなったという成果がみられたそうです。
 
その後、およそ3年前に「辺塚だいだい」のしぼりかすを活用できないかと町から相談を持ちかけられたことをきっかけに、試験的な導入が始まりました。
 
「しぼりかすは廃棄処分するのにもお金がかかります。活用することで地域のためにもなりますし、リサイクルとして環境にも優しいという面もあります」

 

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(肝付町の特産品・辺塚だいだい)
 
完熟前に出荷される辺塚だいだいは、酸味と風味が強いという特徴があります。そのため、えさに混ぜる量が多くなると食いつきが悪くなってしまいます。カンパチはデリケートで、味がわかる魚なのだそうです。配合割合を変えたり、栄養剤をまぜたりして工夫し、食いつきがよい配合を研究しました。
 
また、辺塚だいだいも、そのまま直接混ぜ込むとえさに練り込まれずに流れてしまったり、消化が悪くなったりするため、粉砕する大きさを細かくして調整し、出荷前に15日以上の間、与え続けるようになりました。
 
辺塚だいだいを与えるようになって2年目には、行政の協力も得ながら成分などの検査をして出荷体制を整え、ブランド化が進められました。

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(辺塚だいだいのしぼりかすは冷凍して保存。右は細かく粉砕したもの)
 
こうして生み出された「辺塚だいだいカンパチ」は、仲買業者に「高くてもこのカンパチを買う」といわれるほど高く評価され、固定客がついています。出荷先には、鹿児島県内の外食産業企業のほか、県外の大手百貨店や回転寿司店、ホテルなどがあります。
 
「福岡のホテルで2ヶ月間、フェアを開催したのですが、担当者から『女性から特に人気が高い』と聞きました」と話す谷山組合長。
 
「辺塚だいだいカンパチは自信を持ってPRできるもの。全国に肝付町の名を広め、消費者に広めていきたい」とさらなる知名度のアップを目指しています。
 
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(辺塚だいだいカンパチのさまざまな味わい方も工夫[提供写真])
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(辺塚だいだいカンパチの育つ海)
 
「漁業を衰退させたくない。そのためには、若い人たちが働きやすい、老後も安心して働ける環境づくりが大事」
 
ブランドとして確立し、安定供給することができるようになれば、組合運営の安定にもつながり、若者の定住にも、地域の活性化にもつながります。
 
そのためにも「今後もいろいろ工夫しながら、食べやすい魚を提供していきたい」とさらに磨きをかけ、より消費者に喜ばれる「辺塚だいだいカンパチ」づくりを目指しています。
 
(取材協力・高山漁業協同組合)
 

【高山漁業協同組合】

現在、高山漁協の組合員は正・準組合員合わせて69名。高齢化が問題となっている。
移住者の新規就業は可能か尋ねてみたところ、「設備投資が大変なので、いきなり自分の船でというのは難しい。はじめは、漁協所有の船に乗る、企業の船に乗るという形になると思う。その後、船を持って就業することはできるのでは」とのこと。
 
毎月第3土曜日(原則)には、一般の人が新鮮な魚や加工品、野菜などを購入できる「朝どれ市」を開催。※2018年12月15日(土)に開催!
 
 
●高山漁協の朝の風景
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(朝の硯石港)
 
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(漁船から魚が運び込まれます)
 
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(水揚げされた魚の仕分け作業)   
 
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(せりの準備)
 
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(目がかわいいと紹介されたサワラ?)
 
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(集まった仲買人さんたち)
 
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 (出荷作業)

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