【きもつき情報局】暮らしのなかの「辺塚だいだい」

鹿児島県肝付町と南大隅町で栽培されている「辺塚だいだい」は柚子やレモンなど香りや酸味が強いみかん、「香酸柑橘類」の一種です。
 
2017年には地理的表示(GI)保護制度に登録、さまざまな新商品がつくられるなどして年々注目度が増しています。
 

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(辺塚だいだいは、肝付町と南大隅町にある、「辺塚」周辺で自生していたといわれています)
 
肝付町岸良にあるNPO法人「陸の宝島・岸良」は、辺塚だいだいの青果や加工品の生産・販売を行っており、さらに広めようと製菓関係者を主な対象として2018年12月には辺塚だいだいを使ったスイーツづくりの講座を岸良活性化協議会と共催しました。

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(鹿児島県伊佐市出身の小嶋ルミさんによる、
辺塚だいだいを使ったスイーツづくりの講座)
 
肝付町観光協会がまとめたアンケートによると、講座には「辺塚だいだいの取り扱い方を知りたい」という動機から参加した人も多く、講座を受けてさまざまな使い方を知り、これから活用していきたいという声が聞かれました。
 
果皮が緑色の状態で出荷されることが多い辺塚だいだいですが、製菓用として、熟して黄色くなり、香りは弱くなるものの果皮に含まれる苦味や、酸味がまろやかになった状態でも出荷されるようになったそうで、新たな活用方法が次々と生まれているようです。
 
今回は「実際に身近な存在なのか。地元ではどんな使い方をしているのか」をあらためて調べてみようと、昔のことをよく知っている岸良地域の人々が訪れる「暮らしの保健室」を中心に、住民への聞き取り調査をしてみました。
 

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(岸良地区公民館で開かれる暮らしの保健室の様子)
 
◎辺塚だいだいは昔からあった?
 
「数は少なかったけれども、集落に大きな木が何本かあった」
 
「子どものころは、熟して地面に落ちてきたものをもらって、幹にこすりつけたり、手でもんだりして、中身をやわらかくし、それに竹をストローのようにさして吸っていた」
 
岸良生まれ、岸良育ちの60代~90代の方々の言葉です。90代の方が子どものときにすでに実をつける大きな木があったということで、百年以上前から利用されていたことは確かなようです。
 
もちろん、庭や畑に植えている方もいらっしゃいます。家に植えていなくても、近所の方からよくもらうとの声もあり、身近な存在であることは間違いありません。
 
一方、他の土地から岸良へ嫁いできた方たちは、それまで辺塚だいだいのことを知らなかったそうで、比較的近年になってから知ったという方もいらっしゃいました。

 

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(現在広く栽培されている辺塚だいだい品種(系統)の「原木」)
 

 

 
◎どんな使い方をしているの?
 
みなさんが真っ先にあげるのが「酢の物」。「酢の代わりに使う」のが最も一般的な使い方で、刺身や唐揚げにかけて食べることもよくあるそうです。
 
また、ジュースにして飲むほか、「(香り付けで)みそ汁に入れる」という利用方法もありました。
 
好きな食べ方としては「酢の物」と「刺身にかける」が一番人気でした。
 
お酒好きの方々は、圧倒的に「焼酎に入れる」使い方が多いようです。少ししかお酒を飲まないという方も「薄く切って焼酎に浮かべると、見た目もきれいで香りがよい」と教えてくれました。
 

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(講習会では、辺塚だいだいシロップを紅茶で割るという
アレンジも紹介されました)
 
◎どうやって保存しているの?
 
「しぼって冷凍する」が多数です。ペットボトルなどの容器に入れて冷凍することもよくするようで、釣りに行く旦那さんに「水と間違って辺塚だいだいの汁を渡してしまった」という失敗談を教えてくれた方も。
 
「製氷皿に入れて凍らせると、使いやすい」とも教えてもらい、また、「搾るときは皮がかたいので、皮を叩いてやわらかくしてからしぼると、たくさん搾れる」とのコツも伝授していただきました。
 
ほかにも、「皮を細く刻んで小分けにして冷凍」や、「丸ごと冷凍する」という大胆な保存方法もありました。
 
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(加工途中の辺塚だいだい)
 
◎どんな木なの?
 
「辺塚だいだい」は無農薬でも栽培できる丈夫な木であるといわれています。
 
家の畑などに植えているという方によると「ほったらかしでも、よく実がなるよ」とのことで、1本でもコンテナ1箱以上とれたそうです。
 
たくさん実がなって使い切らないから人にあげているという方は、「自分でとっていって」と伝えているそうです。なぜなら「とげ(岸良弁では『ぴ』)」が痛いから! 収穫体験をされる方は、ご注意ください。
 
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(とげに注意!)
 
「在来種の辺塚だいだいの苗木をもらって植えたのだけど、長い間ならなかった。2~3年前くらいからなり始めたよ」という声もありました。おそらく、原種の実生苗だったのではないかとNPO法人陸の宝島・岸良の永谷博美理事長談。接ぎ木したものはすぐに実をつけるそうで、また、手を入れずに放っておくと、かなり背が高くなるとのことでした。
 
実際、肝付町の南端にある集落、南大隅町との境目に近い大浦へ取材に行ったときには、昔からあるという大きな辺塚だいだいの木を紹介してもらいました。
 
この木は山の斜面にあります。周囲には新たに植えられて育てられた辺塚だいだいもありますが、この木はまさに自然に育ったような形で、手の届かないところにたくさん実がなっていました。まさに昔ながらの「辺塚だいだい」の姿ではないかと思われます。もともとは、このような形で山の中に自生していたのかもしれません。

 

 

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(10メートル超えていそうな大浦の辺塚だいだい)

 

 
地域に暮らすみなさんの声から、暮らしの中の「辺塚だいだい」を感じることができたでしょうか。機会がありましたら、ぜひとも肝付町を訪れて、「辺塚だいだい」に触れてみてください。

 

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