【きもつき情報局】「効率だけ求めてもだめになる」

「朝は寒いですけど、他の地域に比べたら肝付町で良かった!と思います」
 
そういって笑う、緑のふるさと協力隊の納見直さん。
 
20190220_noumisnannyamamizu.jpg
(よく利用しているという、山から水を引いている水くみ場にて)
 
長年東京で暮らしていたが、「いずれ移住して田舎で暮らす」ことを念頭に、2018年度の緑のふるさと協力隊に応募した。肝付町を選んだのは「雪が降らない温暖な場所がよかったから」。希望通り、この冬、雪が降ることはなかった。
 
20190220_michi01.jpg
(「冬でも緑」と驚いた山々を望む、同じく緑の草に囲まれたトロッコ道跡はジョギングコース)
 
納見さんの活動報告書である「ふるさと通信」には、農家の手伝いをはじめ、自分の畑づくりに地域の活動への参加、加工品づくりとさまざまな記録が並ぶ。
 
20190220_hurusatotushin.jpg
(納見さんの作成した「ふるさと通信」)
 
【納見さんの活動の一部】
20190220_inekari0.jpg
(稲刈り:コンバインにも乗らせてもらいました。簡単そうに見えてまっすぐ進むのがとても大変)
 
20190220_inekari01.jpg
(稲刈り:機械で刈れない隅の方は手で刈ります。思ったようにサクサク進みませんでした)
 
 

20190220_komauchi.jpg

(椎茸コマ打ち:木を運ぶ作業から手伝わせてもらいました。ドリルで穴をあけ、そこにコマを打ち込みます。作業はなかなか楽しい!)
 
 

20190220_shuukaku.jpg

(ピーマン収穫:雑念が出ては消え、出ては消え….。収穫に集中せねばと思いつつも雑念が…)
 
ピーマンとトマトを中心とした農家の手伝いでは、種まきにはじまり、苗の移植、支柱立て、枝の誘引、下枝切りなど、出荷までの「行程の多さ」に驚いた。
 
「テクニックも必要で大変です。そんななか切ってはいけない枝を切ったり、折ったりと失敗もしましたが、みなさん、『ゆっくりしなさい』『がんばり過ぎたらだめだよ』と声をかけてくれました」
 
東京では「早く」とずっといわれてきた。自分でも「できなければいけない」「こうしなければならない」と思い込んで無理して頑張っていた。
 
「農業だからこその面もあるかもしれませんが、急いで、効率だけを求めてもだめになるのだなと思うようになりました」
 
肝付町での暮らしを通して「人に認められるために頑張るのをやめよう」と肩の力が抜けたという。
 
そんな納見さんのお気に入りスポットは「畑」。
 
「畑を見にいくのが好きです。川のぎりぎりのところまであったり、細長かったり。野菜のつくりかたもいろいろで、畑にも個性があるんです」
 
20190220_hatake.jpg
(納見さん「幾何学的な感じと右手前のちっちゃい丸スペースがとっても素敵デザイン」[提供写真])
 
そうして見に行った畑で野菜をもらうことも多い。
 
「自給率高いですよね。人にあげられるほど野菜つくっていて、もらうと喜んでくれるのが不思議です」
 
借りた自分の畑では、ケールや桜島大根、からし菜、わさび菜等、少し変わったものもつくってみた。ゴーヤやヘチマのほかは、残念ながら「人にあげられるほどはつくれなかったですね」。スイカにいたっては、管理が大変な割に収穫が2個という結果で「もうしない!」と思ったそうだ。
 
20190220_noumisannnohatake.jpg
(物産館「やまびこ館」の裏手にある、納見さんが借りている畑)
 
畑をしていると、地域のみんながつくり方を教えてくれる。やり方は人によって違っていて、「どの方法にするかは迷いますが、いろいろなやり方があっていいのだなとわかりました」。野菜づくりのアドバイスから会話が生まれて、地域の人々と交流するきっかけになった。
 
「畑、いいですよ。緑のふるさと協力隊や移住した人には、野菜づくりが好きであれば、人から見えるところに畑をつくることをおすすめしたいですね」
 
20190220_ootaniwatari.jpg
(納見さん「畑に行くまでの道(お庭だけど森)にオオタニワタリが植えてあって幻想的な雰囲気です」[提供写真])
 
こうした暮らしの中で感じたのは「都会より不安が少ない」こと。
 
「東京だと、職を失ったら食べられなくなって死に直結するイメージがありました。でも、こちらでは、山にツワなどの食べられるものがあって、ガスを止められても(木で)火をたける。なんとか生きていけそうな気がします。地域の人たちも野菜をくれるなど助けてくれますしね」
 
一方で、人との距離感には戸惑った。「感覚が違うようで難しい部分もありましたね」と振り返る。
 
困ったのは、やはり鹿児島弁。「年配の方も話し始めは、気をつかってくれて、わかるようにしゃべってくれるんですが、だんだん、鹿児島弁になっていって。途中から全然わからなくなることもありました。おばあちゃんたちと若い人が鹿児島弁でペラペラ喋っているのがうらやましいです」
 
さまざまな年代の人々との交流を通して、地域の差よりも世代間の考え方の違いを強く感じた。「若い人たちほど地域差を感じなかった」そうだ。
 
2019年3月で、緑のふるさと協力隊の任期が終わる。今後の暮らしは、まだはっきりとは決めていない。
 
「ただ東京で働きたくはないです。ですが、実家が東京ですので、地方と行ったり来たりできることが理想ですね」
 
これからも「田舎で暮らす」ための手段を模索中だ。
 
20190220_marubouro.jpg
(やまびこ館で販売している納見さん手づくりの丸ぼうろ)
  • コメント: 0
  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)