【きもつき情報局】きもつきの可能性を生かすために<阪本英信さん>

平成2年の進出以来、肝付町(高山地区)で操業を続ける高山CHOYAソーイング株式会社。現在もなお、国内唯一の既製品とフルオーダーシャツ生産拠点としてその名を内外に知られています(同社の製品については「未来シャツ物語」をご覧ください)。
 
今回のインタビューに登場していただくのは、同社の阪本英信社長です。平成4年の10月に赴任されてからほぼ20年、肝付町の住民の一人として地域社会、地域の人々とさまざまな形でかかわりをもってこられた方です。自ら「きもつきが大好き」とおっしゃる阪本社長の目に映った肝付町の姿とは、そしてその可能性とはいったいどのようなものなのか――「よそ者」の視点から率直に語ってもらいました。(※インタビューのビデオはこのページの最後にあります。)

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ふるさととは正反対の土地
――今日は「きもつき大好き人間」の一人として阪本さんにいろいろときもつきのことについておうかがいしたいと思います。よろしくお願いいたします。
はい、ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。
――阪本さんは、こちらに来られてもう20年くらいと聞いたんですけれども……
そうですね、平成4年の10月からということで、まぁ、縁がありましてね、20年ここで働かせてもらい、また家族とともに住まわせてもらいました。
――住み心地はいかがですか?
最高ですね。第一印象はですね、私はもともと鹿児島に22歳のときに初めて来ているんですよ。家内が日置の出身で、あそこにもらいにいったっていう関係で。
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まあ、鹿児島にはその当時から縁はありましたけれども、肝付町のほうにはまったく縁がなくて、20年前に会社が設立されて、私がここへ転勤という形で来て初めて肝付町を知ったという次第ですね。
――工場を誘致されて、ここに工場が建ったということですか?
そうですね、鹿児島県と旧高山町の間で立地協定を結んでいただいて、企業誘致ということで進出させていただいているということです。
――もともとはどちらのご出身ですか?
えー、服がよいから福井。北陸の福井です、はい(笑)。
――やっぱり、福井から見て、この南九州は違いますか?
もう、全然気質も違いますし、風景も違いますし、食べ物も違いますしね。私は福井も当然、生まれ育った田舎だから好きなんですけども、また正反対なここ鹿児島も、また肝付町もそういう意味でね、正反対という部分で非常に好きです。
開放的で明るいきもつきの人たち
――その正反対とはどういうふうに違うんですか?
まず一つ、人間的な部分でいえば、やはり北陸というのは非常に厳しい冬がありましてね、そこを耐えしのぐということで、どうしても朗らかではないんです。内に秘めた闘志っていうのはあるんですけれども、それを表にぱっと出すほうではないんですよ。
ところが、鹿児島、肝付町っていうのは、やはり非常にオープンで明るくて、人を、バリアを張らないで受け入れてくれるという、そいういうところをものすごく感じましたね。
――たぶん、阪本社長のお人柄もあってオープンに受け入れるんだと思うんですけど……
いえいえ、そんなことないと思いますよ。
――でもそういう話を聞くと、やはり地元の人間からするととても嬉しいですよね。
失礼な言い方ですけど、土足で入っていっても怒られないという、まあそんな感じで「どうぞ、どうぞ」っていう感じでしたので、そういう意味で非常に人間的に素晴らしい町だなという印象が一番でしたね。
衰退する「理想的な田舎町」
――それから20年、かれこれ経ったわけなんですけれども、その辺っていうのはあんまり変わってないものですか?
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いや、最初の町のイメージとしては、外観的には非常に清楚な、きれいな田舎の町という印象で、非常に私の理想としてるような田舎町だったんですね。
それから、商店街のほうもまだ、旧駅前のところ、それから本町通り、その辺も非常ににぎわっていたんですけどね、この20年間で、すごい、まあ変な言い方ですけど、さびれかたをしてきて、それをまぁ、目の当りに見てきました。
――人の気質という点では、変わってはいないですか?
それはもう、まったく変わっていないですね、はい。
――20年っていったら結構長い年月ですよね。
はい。
――その間ずっと、言葉は悪いかもしれませんけど、よそ者の視点でこちらを見ていただいたわけですから……
そうですね。
――やっぱり、その阪本さんの目に映った肝付町というのはすごく私たちにとっては貴重ですよね。
素材はすばらしいが……
――いろんな側面があると思うんですけれども、率直にですね、阪本社長からご覧になって肝付町のいい面、それと当然、あまりよくない面もあるかとは思いますけれども、その辺はいかがですか?
一つはですね、やはりこの風景ですかね。自然ですかね。もうこれは、どこにも換えがたい素晴らしいものをもってるんじゃないかと(思います)。内之浦、岸良、辺塚の海岸を有していますし、それから広々とした肝属平野がありますし、国見岳、甫与志、黒尊という大きな山、緑豊かな山にも囲まれてますし……まぁ、そういう意味では、本当に世界に誇っていい自然を持ってるんじゃないかなと思います。
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それから、食べ物。もう、やはり人間は食ですからね。海のもの、特に内之浦産のものですね、天然のお魚類。もうこれは、私はあるお店があってですね、そこに20年間通っていたんですけど、もう最高ですね。
ほかから、VIPの人を含めてですね、必ずそのお店に紹介して、内之浦産の天然の魚を食べてもらっていたんです。口ぐちに、世界を股にかけてる人でも、日本で最高の食材だといっていただけましたよ。
それから黒牛、黒豚、地鶏を含めて、お肉類もおいしいということで、もう食についてもですね、どこにも負けない。私はほかから来た人にどんどんアピールしているところですよ。
――自然も食も素材という意味では最高ということですね?
そうですね、はい。ただ、それを生かすところがなくてね。おいしいものを食べたいといっても、外から来た人がいざ(行こうと思っても)なかなかなかったんですね。最近はようやく少しずつですね、出てきてますけど。
もっともっと、そこに味付けをしてね、アイディアを盛りこんで、アピールしたら、もっと肝付町以外の人もね、肝付に行ってみたい、あれを食べてみたい、あれを見てみたいというふうになるんじゃないかと思いますね。
――そこのマーケティングも含めて、見せ方っていうのはなかなか不得意な部分ですよね?
そうですよね。
欠けているおもてなしの態度
――あと人々がですよ、例えばよそから観光客がきたときの対応とか、その辺はいかがですか?
やはり、その辺っていうんですかね、もともと接客に慣れていない部分があるんじゃないかと思います。私たちも地元でものを買おうとした場合に、「いらっしゃいませ」がなかなかないんですよ。普通、入ったらどこでも「いらっしゃいませ」と明るい言葉でいってくれるのが、ここ肝付町の商店街にはそういうのが非常に欠けてるんですね。
――地元の福井の方はどうなんですか?
いや、そういうことないですね。「いらっしゃいませ」とはいってくれますよ。やっぱり、ここっていうか、私が本当に知っているのはこの肝付町しか知りませんので。それを来た時から現在も感じているところですね。
――ただ、そのおもてなしの心がないっていうわけじゃないんですよね。ただ、見せ方がちょっと…
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ええ、それを素直にいえない。だから、親しき仲にも礼儀あり、っていうじゃないですか。それで、ここは親しいからとか、地元の人だからというので、もうそこに安閑としてるわけですよね。
だから、どんな人でも、知ってる人でも「いらっしゃいませ」って、「ありがとうございます」って素直にいえるような形になればね、もっともっと幅広い人に気持ちよく肝付町に来ていただいて、気持ちよく買い物していただけるんじゃないかと思いますね。
工夫次第で活路は見出せる
――さきほど社長がおっしゃったように、どの地方も廃れてきているということで、いろいろ活性化の知恵を絞って、いろんなことをやってますけれども、この肝付町が活性化するうえで、阪本さんから見て、どういったことが必要なのか、どういった視点が必要なのかということをおうかがいしてもいいですか?
まずね、やはり、今のままでは私はなかなか難しいと思います。いくらいい素材があっても、それを生かし切れていない。生かし切れていない基本は、もうあきらめているんじゃないかと。もう、いくらやったって肝付町はこんなもんだ、ということで諦めてるんじゃないかなっていう意識が私には感じられますね。そうじゃなくて、やはり今いったように、素材がいっぱいあって、工夫の仕方でどうにでもなるんだよ、と。
ただ、いろんな制約条件があるでしょうから、行政なり、我々民間が引っ張っていく、ちょっと押してあげるというその仕組みができれば、やはり絶対捨てたもんじゃないと私は思っているんですけどね。
――まあ、そういう意味では、地元の人だけでやるんじゃなくて、外部の力をうまく取り入れることが大事でしょうね。
そうですね。もう、絶対必要だと思いますね。
みんなで力を合わせて
――阪本さんのところでは、こうやってシャツなどをつくってらっしゃるわけなんですけれども、町のロゴをつけたシャツですとかもつくってらっしゃいますよね。
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はい、とにかく私も肝付町にほれた以上、どんな形で肝付町をアピールしたらいいのか(考えています)。
せっかく肝付町に来ていただいた方が肝付町をアピールするお土産がないということで、先日もコスモピアからお客さんがきて「肝付町のお土産が欲しいんだけど」ということで、うちに相談にこられたんですよ。
それで、そのときは、はやぶさグッツだけは置いてあるんですけど、まぁ、はやぶさは、はやぶさで、やはり肝付町をもっと(アピールしたい)という部分で、そういう依頼を受けたので、私も受けた以上、なんとか応えようと思って、今回肝付町のかわいいゆるきゃらを使ったポロシャツとTシャツをつくったんですよ。
――そういう商品開発の部分も弱いですよね。
はい。だから、私たちは一企業ですけれども、個人の企業の方はもっと大変だと思いますけどね。ただ、アイディアだとかいろんなことを出していただいて、さっきいったように町とか行政とか地域とか企業とか、そういうふうに連携の場を設けて、そこでテーブルに上げていただいて、それをこういう商品にしようとか、これを進めようとか。やっぱり、一人の力というよりも、やはり、みんなの総合的な力をね、今やっぱり発揮するべきではないかなと思いますね。
――さっきですね、阪本さんのことを「きもつき大好き人間」というふうにお呼びしたんですけれども、その大好き人間の一人として最後に地元の人たちに、中にはもう諦めている人もいるかもしれないし、どこかで頑張っている人もいるかもしれませんので、地元の人向けにですね、伝えたいこと、メッセージなどがあればお願いします。
とにかく、ずっと肝付町にいる方っていうのは、灯台下暗しで自分ところのよさが分からない。うちは田舎だからというふうになっていると思うんですけれども、今こそ田舎がですね、見直されているんですよ。
そういう意味でですね、自信を持って自分とこの町をもう一度見直して、歴史の町であり、流鏑馬(やぶさめ)もあります。それから、古墳群もあります。それから、内之浦のロケット発射基地もありますし、もう数えだしたらきりがないくらい、いろんな自然も文化遺産もあるわけですよね。そこに住民の方のアイディアをぜひ、進んで出していただいて、それをなんらかの形にしていって、何か発信していったら、もっともっと素晴らしい町になってくんじゃないかな、って思います。
――おっしゃる通り、素材は素晴らしいんですけどね。後は生かし方ですね。
そうですね。
――あと、人々の心が一つにまとまって、やれるかどうかってことですよね。
そうですね。私も20年住んでいる一住民として、それから22年、23年お世話になっている会社の責任者としてね、バックアップをしっかりしていきたいと思いますので、本当に頑張っていただきたいなというふうに思います。
――社長にもこの会社にもですね、今後ともどうぞ、肝付町に力を貸してください。
いえいえ、こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。
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