鹿児島県肝付町のさまざまな魅力を多彩な切り口と多様な手法を使って全国に発信するポータルサイト(地域メディア)「きもつき情報局」の正式オープンを記念する式典が10月1日、多数の参加者を迎えて、肝付町の高山やぶさめ館で開催されました。
きもつき情報局に課せられた重要な使命
式典ではまず「開局の儀」に続いて、「きもつき情報局」を企画運営するNPO法人きもつき情報化推進センターの窪田伸一理事長が同センター設立の経緯と目的などを説明。その中で窪田理事長は、肝付町の豊かな自然やそれが生み出す産物、そして地域に生きる人たちの元気で明るい日々の営みを伝えることの重要性を指摘するとともに、「『ここに肝付町あり!』と認識していただき、人、モノ、カネ、知識等の交流を図り、肝付町の活性化に努めることがわれわれに課された最重要課題であります」と述べ、情報発信にとどまらない同センターの役割について説明しました。
続いて、来賓を代表して永野和行肝付町長から祝辞があり、その中で永野町長は次のように述べて、「きもつき情報局」に対する期待と希望を表明しました。
「このポータルサイトについては、構築から運営までをきもつき情報化推進センターに委託しております。9月に入り、ベータ版が公開され、私も毎日楽しみに拝見させていただきました。サイトデザインについては、肝付町の自然を形取った非常にすばらしいものであると感動しております。また、コンテンツについても、肝付町のさまざまな資産――人であったり歴史や自然、伝統など――を発信できる仕組み、つくりとなっており、豊富な内容構成となっています。
また、商店街などを紹介するサイトも含まれており、特に今後は、EC(電子商取引)サイトを活用した販路拡大や新たな肝付ブランドの創造を通じて、地域活性化や雇用創出の足がかりになることを期待しております。このポータルサイトは肝付町が大きく飛躍する可能性を十分に秘めております。官民が協働するとともに地域住民や来町・観光者の方々が大いにこのサイトを利用していただきたいものです」
もたもたしているうちに世界が追いついてきた!?
永野町長の祝辞に続いて「きもつき情報局」の目的と狙いについて同センターの有留修事務局長がプレゼンテーションを行いました。
その中で同事務局長が強調したのは、「肝付町(をはじめとする日本の田舎)は決して遅れたところではなく、いま現れつつある次の時代を支える価値観から見れば、新しい時代が求めているもの(=宝物)がたくさんある」という点。世の中の価値観が大転換する過程において、日本を含む、世界中のそれに気づいた人たち(=「文化創造者」(カルチュラル・クリエイティブズ)に向けて、ふるさとの魅力を発信することで、世界の良質な人たちの評価するところとなり、それが人やモノ、カネ、知識等の流れを生み出し、地域の活性化にとって大きな役割を果たすと強調しました。
いわば、「『どうすんべ』ともたもたしているうちに時代のほうが田舎に追いついてきた」ということです。つまり、近代化・都市化の波に乗り遅れ、これまで古い、あるいは無価値と思われた自然環境やライフスタイルが破壊されずに残ったがゆえに、そういうものを求める時代がやってきて、それがそのまま地域再生のための強い味方になるという考えを集まった人たちに投げかけたのでした。
情報化とアジアの世紀をとらえて
そして最後に登場したのが、この日のメインスピーカーである中川十郎先生。長年商社マンとして世界を舞台に活躍した後、大学教授に転身した旧高山町出身の中川先生は日本ビジネス・インテリジェンス協会を立ち上げた日本を代表する情報分野の専門家でもあります。
「肝付町の未来と世界を結ぶ『きもつき情報局』」と題するスピーチの中で中川先生は、これからの時代を「情報化」と「アジアの世紀」という二つのキーワードを使いながら説明、その二つの大きな流れをとらえて地域の活性化を図るべきだと強調しました。
まずは「きもつき情報局」を駆使して地域の情報を全国に、そして世界に発信し、そうした活動を通じて、特に成長著しい中国を中心とするアジアとの関係を密接に構築しながら、人やモノ、知識の流れを生み出す必要があると指摘しました。
さらに具体的なプロジェクトとして情報通信技術を教育や医療、そして観光や物産販売といった分野に活用することを提案するとともに、新しい企業誘致や社会人向けの学びの機会の充実についても今後強化していくよう訴えました。
肝付町を含む大隅半島には、こういった大学レベルの話を聴く機会がほとんどないため(鹿屋体育大学はありますが、一般の大学はありません)、今回の中川先生の講演は集まった地域の人たちにとっても頭を刺激される非常にいい機会になったのではないでしょうか。
以上で記念式典は終わり、引き続き行われた交流会には役場や商工会関係者、ならびに町議会議員、流鏑馬保存会のメンバーなど50名ほどが参加しました。これについては、日ごろの職域や活動分野を越えて多種多様な人たちが集まる「あまり例のない交流会」(役場関係者)となったようです。
このように「きもつき情報局」を核として、日ごろの付き合いを超えた集まりの場を提供することもまた同センターの重要な役割のひとつとして浮上してきたのでした。
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