これまでお伝えしてきたとおり、肝付町の高山地区に伝わるやぶさめには実に多くの人々がかかわり、多大なエネルギーが注ぎ込まれています。そこには900年近く続くとされる伝統行事をなんとか存続させようという、関係者の並々ならぬ意気込みと決意が表れています。
今回のやぶさめロードでは、それだけ地域にとって大切なやぶさめの複雑さと大変さについて、射手と真砂、そして馬という3つの側面に光を当てて、みなさんにご紹介したいと思います。
今回もまた解説をお願いするのは高山流鏑馬保存会の広報担当、武下敏行さんです。
まず、射手については、その選出の難しさが指摘されます。それもそのはず、射手本人の覚悟も必要なら、それを支える両親をはじめとする家族、そして彼らの暮らす地域の力が不可欠だからです。その3つの力がなければ、射手が射手として活躍することはできないのです。
毎年、たった一人とはいえ、14歳の男の子を射手として選び、育て上げる苦労には並々ならぬものがあるわけですね。
次に、普段の生活ではほとんど馴染みのない真砂(まさご)についても、やぶさめの中では大きな意味を持っています。高山やぶさめの場合は、この真砂は近くの志布志湾に面した柏原(かしわばる)海岸からとってきたもので、射手の父親が馬場を清めるために馬の移動の前には必ずまくことになっています。
練習初日に真砂をまく練習をする射手の父親(右は去年の射手の父親)
けがれを清めるためですから、いろいろな決まりがあり、たとえば、真砂をまいたあとで人が通ったりすることはできませんし、犬や猫などの生きものが通っても、まきなおしになるのだそうです。また、海岸からとってきた真砂を乾燥させるのも射手の両親(通常は父親)にとって大事な仕事で、その乾燥についてもそう簡単ではありません。
最後に馬についてですが、武下さんの説明によると、熊本県の阿蘇のせり市から子馬を買ってきて、それをやぶさめの馬として育て上げるのだそうです。今年の場合は「はやぶさ」という1歳4ヶ月の新馬が予定では本番で走ることになっているものの、新馬だけに当日の行動に予測がつきづらいところがあり、保存会の人たちや馬主さんたちは最後の最後まで頭を悩ませることになります。
以上のように、やぶさめと一言でいっても、一つひとつの側面にはそれだけで複雑で大変な要素があり、そのいずれでも不手際があれば、やぶさめ自体がうまく進まなくなる可能性があります。
まったく、気の遠くなるような作業だといわなければなりませんね。それにかかわる人たちのご苦労には頭が下がるばかりです。
それでは、高山流鏑馬保存会の武下さんの解説に耳を傾けてみてください。
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