肝付町移住促進支援事業の一環として進められている、岸良の空き家改修に2014年2月からゲスト建築家として参加している日髙仁さん。
東京大学や関東学院大学で非常勤講師を務め、肝付町以外の地域でも空き家再生プロジェクトに携わっています。
今年も3月4~6日に行われた、3回目の改修作業に岸良を訪れました。打ち合わせなどでの訪問を含めると5回目の訪問です。
岸良の人々とともに作業をし、交流を深めている日髙さんに空き家改修や地域についてインタビューしました。
(作業中の日髙さん)
――全国各地で空き家改修を手がけていらっしゃいますが、岸良の特徴といったものは何かありますか。
自治体が主体の公共事業として委託を受けて改修するのがほとんどです。地域で住民が一緒になって共同でするケースは他にありません。そういう意味でも面白いですね。
そして、集まってくる地域の人々が、みなさん、大工仕事がうまいんですよ。素人だといいますが、知識も多くて毎回驚きます。こうした意味で地域の力が高い。なかなかほかにないと思います。
また、空き家は全国的な問題となっていて、危険、不安といったネガティブなイメージがありますが、岸良の家はまちの資産として活用されていて、使い方も面白いですね。
なかなか例の少ない、先進的事例だと思います。
(改修中のきしらの家)
今回はカフェなどの業務ができるよう風呂場を台所に改修しました
――改修に参加する学生さんたちの反応はどのような感じですか。
募集をかけて学生を毎回連れてきていますが、みんな「面白い。こんな地域があったのか」と驚きますね。
大学には空き家再生サークルというものもあるのですが、学生が実際にこうして改修にかかわる機会はあまりありません。
空き家改修活動のいいところは、誰でも参加できるという点。そして完成すると「家」ができる。教育の良い題材にもなっています。
(空き家改修によく参加しているという学生さん。「海が綺麗」と感動していました)
――今後の改修予定はなにかありますか。
毎回、飲み会で決まっていくので、まだ決まっていませんが(笑)
アコウの木の下を中心に外側を使いやすくし、家具なんかも少しずつ増やしたいですね。
観光を狙うのであれば、古い家を改修して同じようなものが5~6軒できたら、長崎県・小値賀(おじか)島のように人が呼べるようになるのではないでしょうか。
――岸良の魅力はどういうところだと感じますか。
なにもないとみなさんおっしゃるんですが、それがいい。
海はもちろん、用水路の水もきれい。この状態をキープするだけでもいいと思います。
(「暮らしの保健室」できしらの家を利用している町地域包括支援センターのスタッフ(左)も改修作業をお手伝い)
――岸良は町内でも高齢化が進んでいる地域でもありますが、どのような取り組みをすればよいと感じますか。
高齢化が進んでいるとはいいますが、高齢でも元気な方が多い。都会だとラッシュ時間を避けることで、生活時間は限られたものになり、引きこもりがちになってしまいますが、こちらではそうした制限もなく活動できます。
農業や漁業など仕事もいろいろしていて、そうした経験によって、いつも人の役に立てる。定年も関係ない生涯現役のような暮らしができます。
地域住民の80代の男性を見ていると、こんな年の取り方をしたいと毎回思います。高齢化といっても、数値だけの問題ではないと感じます。
地域の力を維持するには、学校をなくさないことが大事。学校は生命線だと思います。
これは、過疎が進む地域を見てきて強く感じたことです。子どもがいるかいないかで大きく違います。大人だけだとギスギスしてしまう話し合いも、子どもがいるだけで和みます。
そして、子どもに、子育て世代に来てもらうには学校が必要です。学校がなくなると他の地域へ引っ越してしまいますから。
年に2~3世代でいいので、毎年子育て世代に移住してもらえるまちを目指すことが必要だと思います。
保育園復活も含め、若い人に来てもらえる地域づくりを「裏テーマ」として参加しています。
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